「さよならテレビ」感想
さよならテレビ、みた。超絶大傑作!「セシウムさん事件」の東海テレビを舞台に報道の舞台裏を取材したドキュメンタリー。不慣れな派遣社員を現最前線に置く貧弱な体制、視聴率至上主義やスポンサーにおもねる是非ネタの存在、第四の権力の信頼の失墜…〈テレビ〉そのものを皮肉る構造にやられた。
テレビは受動的なメディアであり、視聴者は切り取り、編集された映像を受け取るだけの存在だ。「新春テレビ放談2020」で佐久間宣行とヒャダインが「視聴者は騙されたり裏切られることを嫌い、極端にリアルを求めるようになった」と語っていたが、その通りだと思う。リアルを〈選ぶ〉時代になったのだ。
ベテラン契約社員の澤野はテレビや報道の行く末を案じ、共謀罪の取材に力を注ぐ。弱い人たちの目線に立つことより、自分の生活や出世の方が大事になったエリートたちの組織に、人びとはそっぽを向いている。新人の派遣社員で新人記者の渡辺は要領が悪く叱られ続ける。クビの恐怖で萎縮する悪循環。
キャスターの福島は「セシウムさん事件」で矢面に立たされて以来、表現者としてのあり方に苦悩している。沈みゆくテレビ業界だけでなく、閉塞感から抜け出せないニッポンの社会を象徴する3人の現場社員。そして〈テレビドキュメンタリー〉の枠に潜む大きな罠。単なるエクスキューズではないはずだ。
「モダン・ラブ 〜今日もNYの街角で〜」第2話感想
モダン・ラブ 〜今日もNYの街角で〜 第2話、みた。恋愛アプリ企業のCEOと、彼を取材する記者の〈過去に置いてきた恋〉の物語。ヒョウとチーターは違う。たくさんすてきな出会いを経験しても、忘れられない恋がある。人生のベテランから若人への〈お節介〉がオシャレでよかったですね。良作。
「モダン・ラブ 〜今日もNYの街角で〜」第1話感想
モダン・ラブ 〜今日もNYの街角で〜 第1話、みた。最高!アパートの住人とドアマンの友情を描く。なかなか恋が成就しないマギーの困ったような顔が素敵。そして一見クールだけど優しい目をしたグズミン!住人とドアマンの距離感を超えないからこそ、その信頼関係にグッとくる。なんて粋なんだ〜。
あしたからの労働が憂鬱で仕方なかったけど、ちょっとスッキリしたよ。近くに親しい〈他人〉がいるって、すごくいい。大都会の人間関係はドライかもしれないけど、こういう温かい交感があってもいいよね。グズミンが子育ては村でするものって言う場面があったけど、まさしくそうだと思った。
「パラサイト 半地下の家族」感想
パラサイト 半地下の家族、みた。超絶大傑作!二極化した格差社会の実態を寓意を交えグロテスクに描く。猥雑な半地下の生活と匂いのない洗練された豪邸の非対称、緊張から生まれる〈笑えない〉笑い。観客の予想を裏切り続けるこの映画の〈不確かさ〉こそ現代を生きる庶民の不安と絶望そのものなのだ。
特別上映用の監督メッセージにある通り、できれば前情報なしのまっさらな状態でたのしみたい作品。なので詳細への深入りは避けるけど、キム一家の行動とそこから引き起こされるカオスな展開に身を委ねる体験は、国家や社会に裏切られ続けてきた人びとの歴史なのではないかと思わざるを得ない。
「新米姉妹のふたりごはん」感想
新米姉妹のふたりごはん、全話完走。山田杏奈と大友花恋がそれぞれこれまでのイメージとは逆の役を演じる。さいしょはイマイチ噛み合っていなかったけど、徐々にハマった印象。サチの「今日あなたが何を食べているか考えていた」という言葉にこの作品のすべてが詰まっていると思う。胃袋ドラマ。
「左利きのエレン」感想
左利きのエレン、全話完走した。何かになりたいともがく〈凡人〉デザイナーと、つねに彼を呪い続ける存在としての〈天才〉エレン。何者かになるんだとのたうち回る朝倉の痛々しさよ。ところどころマンガから実写へのフォーマットにズレは感じるが、朝倉が最後に見た景色には感動してしまいましたよ。
はじめて知ったんだけど、石崎ひゅーいっていい役者ですねえ。神谷さんの実際にいそうな感じが素晴らしい。俺の中のデザイナーのイメージはアレです。エレンと朝倉の過去と現在が交錯する前半よりも、朝倉の広告代理店苦労話に軸足移る中盤以降の方が面白かったり。最後むしろエレンが展開の足かせに。
つまり俺は天才よりも凡人の話を見たい、ということなのかもしれない。柳さんが人の上に立っちゃいけないタイプの才人で、でも実はサラリーマンであることが限界であることに気づいている感じのバランス感覚がとてもリアルだった、と思う。