「男はつらいよ 寅次郎と殿様」感想
男はつらいよ 寅次郎と殿様、みた。嵐寛寿郎の演技を初めてみた。これはまさしく〈殿様〉としか形容しようがない。面白いキャラクターだ。ここ数作の中ではマドンナの存在感が薄い。そして今回も振られかたが切ない(あんまり寅さん乗り気に見えないが…)。おいちゃんの「寅、一杯やるか」が優しい。
寅さんとの別れの場面を直接描かず、さくらに語らせるパターン、これまであまりなかった気がする。前作「寅次郎純情詩集」が柴又駅での別れだったし、なんども描かれているからこそ?扉の向こう側に寅さんの寂しそうな表情が目に浮かぶ。そういえば今回は寅屋のみんなも寅さん帰宅にウェルカムモード。
だいたいいつも悪口で盛り上がってるところにタイミング悪くやって来るものだが。しかし、今回は拾ってきた野良犬に「トラ」と名付ける失態。流石に寅さんが舐められ過ぎてて悲しくなってきた。「犬って呼ばれても仕方ない生き方してるだろ」って、明らかにおいちゃんも言い過ぎである。
だからこそ、振られた後においちゃんが「飲むか」と声を掛けたのが優しくて好きなのだけど。階段をヨロヨロと転げ落ちる寅さんの反復。最初と最後で「疲れた」の意味が違う。毎度の事ながら、振る側が一切好意に気づかず、勝手に寅さんが傷つくだけなので、非常にエコだと思う。