映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「キューポラのある街」感想

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キューポラのある街、みた。いまやベッドタウンの川口だが、当時は荒川を挟んで貧困世帯も住む工業地帯だった。そんな土地でもがく若者たちの物語。高度成長期の格差、朝鮮人差別などアクチュアルな問題も描かれ、当時の生々しい空気感を知る。吉永小百合が瑞々しい!ラストの疾走感も良い。

成長に取り残された人びとの目線は上を向いて歩こう」や「新幹線大爆破」でも描かれており(前者の主演はまたしても吉永小百合)、東京オリンピックの開催が必ずしも明るい面だけではなかったと知ることができる。一億総中流はあくまでスローガンだった。

酒浸りで仕事をする気のない父親に殴られたり、客に媚を売る母親を目撃してしまったり、結構重い。在日コリアンが希望を胸に北朝鮮に帰っていく様は、いま見ると複雑である。どちらに居ても幸せであったとは言えないだけに。しかし、クライマックスの自転車の疾走と締めの引きの絵で爽やかな後味に。

テーマ設定の(言い方悪いけど)お行儀の良さ、啓蒙的なお話運びは、これはこれで勉強になるしいいのだけど、はたして映画としてグッときたかというと微妙である。2020年という時代にこの映画を見たとき、必ずしもジュンの進む道のその先に希望があるとは限らないと知っているから。感想おしまい。