「本気のしるし 劇場版」感想
本気のしるし 劇場版、大傑作!自覚なく他人を振り回す浮世と、破滅を予感しながら彼女にのめり込む辻。無私の愛でも、肉欲でもなければ、単なる火遊びでもない。常に不合理で、まわりにこんなに極端な人間いるか?と問われたら答えはもちろんNO。でも、この物語は確かに生々しく、血が通っている。
サスペンスフルな内容ながら不条理な笑いが至るところに散りばめられている。ズレが生み出す不気味さと可笑しさ。カチカチと動くファーストショットのカブトムシのオモチャのように、その意図が読み取れない、コミュニケーションの土台が完全に分断された絶望が、このドラマにはある。
時に全く理解できない他者に感じる恐怖は「友だちのパパが好き」を連想する。友人と父のセックスは、まるでナメクジ同士の交尾を見ているように作業的で、人間もまたシナプスを流れる電子信号に操られているんだと気付かされる。
深田晃司監督の作品はそれほど見られていないのだが、直近で言うと「よこがお」もやはり同じ質感。日常に他者が侵入する違和。ちょっとぶっ飛んだ設定だけど妙に納得して見れられてしまう。濱口竜介「寝ても覚めても」が好きな人はハマるかもしれない。これを連ドラでやったというのだからすごい。