映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「有村架純の撮休」全話感想

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有村架純の撮休、全話みた。メチャクチャ好き。エピソードによって濃淡はあるが、第3、6、8話が特に良い。回によって自堕落だったり、仕事人間だったり、重めの恋人だったりと、作り手のカラーや願望が出ていて面白い。本人を演じつつ毎回違う表情を見せるのはさすが。有村架純がより好きになる。

是枝監督回の第3話は、別れた恋人との「偶然」の再会を描く。すべての背景を描くわけではないが、ふたりの間を流れていた時間の重みが会話の端々から漏れていて、とても良かった。30分の短編に適したサイズ感、オチのおしゃれさも含めて大好きなエピソード。

今泉力哉監督・脚本の第6話はいちばん好きかもしれない。監督の描く、絶対に居合わせたくない気まずい会話の描写が最高。今回も「元カノの結婚式に出るのは〈普通〉なのか」で揉める。特に解はないけどふきげんな有村架純が良い。長回しによる生々しい間も「これこれ!」となる。好きのバランスかあ。

第8話はバッティングセンターで出会う謎のおじさんとの会話劇。野球は待たないと球に当たらないけど、そもそも振らないとヒットの可能性すらない。野球を恋愛に例えるのはありきたりだが、素直にお互いのアドバイスを受け止める有村架純とおじさん(前野健太)が可愛らしい。ブチギレ有村架純も良い。

「ハッピー・オールド・イヤー」感想

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ハッピー・オールド・イヤー、みた。ミニマリストを目指して実家のリフォームに着手したジーンだったが、借りたままのモノを返す中で元恋人との思い出の品を見つけ…。ジーンがなかなか共感を寄せ付けない人物像だが、過去と向き合う痛み、身勝手がぶつかり合う苦しさを上品に描いた佳作だと思う。

「バッド・ジーニアス」と同じスタッフ、主演だが、テイストは全く異なる。ウェルメイドなアメリカのインデペンデント映画を見ている感覚。サンダンスあたりで売れそう。主人公のジーンが小憎たらしく、わりと自分勝手かつ言ってることの正しさのわりにモノの管理はだらしない。借りパクの域超えてる笑

デザイナーとして理論は学んでるんだけど、人間関係は埃かぶったまま放置しているという。クレバーなんだろうが頭でっかちだな…というキャラをうまく演じているのがチュティモン・ジョンジャルーンスックジン(タイ人の名前は長い)。大人になりきれない未熟さ、めんどくささがなんとも生々しい。

ジーンとエムが対峙する場面、俺はエムのこと「言ったれ言ったれ!」と応援してしまいましたよ。いまさら謝りに来るなんて、許しの恫喝だと。罪悪感を抱えたまま生きてくれとは結構残酷なことばで、彼なりに腹に抱えていたものが見え隠れする。父親とのエピソードも、予想とは違う方に進んでびっくり。

ちょっと前半ウトウトしてしまった(となりのオヤジもだいぶ寝てた)のと、後半ちょっとテンポが落ちてしまったので、俺の中の評価はそこそこ。物語のエンジンかかるの遅かったし、(それこそミニマルに)100分ぐらいに収めてくれたらもっと好みだった。

「ハニーランド 永遠の谷」感想

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ハニーランド 永遠の谷、みた。北マケドニアの山奥で老母とふたりで暮らす自然養蜂家を追うドキュメンタリー。トルコ人一家が隣にやってきたことから話は急転する。歪んだ父性と目先の利益に飛びつく強欲さが平穏な親子のくらしを破壊していく。ああ、これは世界から戦争なくならないわけだ…。傑作。

ポスターから大自然のくらしを追うゆったりしたドキュメンタリーを想像していたので、かなり面喰らいました。カメラの存在を感じさせない人物の佇まい、そしてあまりに劇的な展開に、製作側の介入を疑いたくなるが、3年半もの月日をかけて取材した結果と聞いて納得。よく撮ったなあ。

スコピエの街でハチミツを売り歩き、病で衰弱していく寝たきりの母を介護する日々。耳の遠い母にがなりながら会話する主人公の姿が微笑ましい。水道も電気も通らない世界で、ミツバチの世話をしながら、その人生を終える。モノに溢れたニッポンでくらす自分には想像もつかない…。

純粋な疑問として、ここにくらす人びとの幸せとは一体なんなのだろうと思った。ほとんど「社会」すら存在しない村(それはトルコ人家族の介入で壊されるが)で、自己実現や承認欲求の悩みは生まれるのだろうか。他者のじゃまが入らない、近くに居るのは家族だけの生活。

トルコ人家族の父親は、目先のお金に飛びつき、失敗を他人になすりつける無責任な男だ。冷静な息子の意見も聞き入れない。結果、彼らには「バチが当たる」のだ。しかし、好き勝手に自然を破壊した煽りは、主人公の生活を直撃する。「半分はわたしに、半分はあなたに」の想いは裏切られる。

崇高な理念がよく知りもしない他人の欲に破壊される。なんとも言えない無力感が鑑賞後に残った。しかもこれは劇映画ではなく、ドキュメンタリーなのだ。ことしのドキュメンタリーは「さよならテレビ」「春を告げる町」「はりぼて」「なぜ君は総理大臣になれないのか」「僕たちの嘘と真実」「空に聞く」と豊作だったな〜。

「サイレント・トーキョー」感想

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サイレント・トーキョー、みた。クリスマスムードの恵比寿に爆弾の恐怖が忍び寄るオープニングから渋谷大パニックの流れはすごく楽しい。見慣れた景色が地獄になるのは、映画の醍醐味。それを渋谷で見られるなんて。でも、そこから先は尻すぼみ。相棒2時間SPでも見ましょう。そっちのが面白い。

前半はかなりテンポが良く、あれよあれという間に事態が進展していく。登場人物の背景を変に深掘りすることもなく、邦画大作系にしてはめずらしくハードボイルドな作り。正直、このままのテンションで最後まで行ってくれたらかなり好きだった。残念ながらその願いは簡単に打ち砕かれるわけだが…。

犯人が佐藤浩一と冒頭で明かされ、新内閣の発足のニュースが流れる時点で、ある程度政治犯であることは予想がつくし、なんとなく言いたいこともわかるのだが、特にどんでん返しがあるわけでもなく、そのままヌルッと話が進む。それでいて謎の散りばめ方がヘタ。回収もすべてセリフ。

いちばんの山場がドライブしながらおしゃべりとは、まじめにスリラーを撮る気がないのではないかと疑いたくなる。そもそも政治犯なら一連の事件に対する世の中の反応を見せるべきでしょう。回想パートの毎熊克哉でちょっと笑ってしまった。主張も古いし。なんとなく前政権を匂わせてはいたが。

渋谷のハロウィンの騒動から着想を得たと思われる、中盤の山場。ここはさすがに見所がある。いくらストーリーが相棒元旦スペシャルの真似事でガッカリ度高めと言えど、この渋谷大パニックを劇場で見逃すのはもったいない。あそこで騒いでるカッペみんな痛い目見ればいいのにという願いを叶えてくれる。

爆弾テロの危険があれど「場所と時間わかってるんだからその時だけ避ければ大丈夫」とクリスマスディナーに向かう広瀬アリス演じる女性や、その他大勢のヤジ馬の呑気さには、皮肉にもコロナ禍のニッポンのアレコレが重なってしまう。そして、あのちゃん!これ作ってる人は意地悪だなと思った。

映画で描かれる政治的主張の古臭さ、「それでも信じてみよう」とかいうセリフのダサさに感じた加齢臭は、結局のところ渋谷テロのパートの若者への目線、その演出の安直さと不可分のものであると思う。むしろああいう安い主張に自衛隊使わないでほしいけどなあ。映画の中の首相と同じでしょ…。

「佐々木、イン、マイマイン」感想

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佐々木、イン、マイマインをみた。ひさびさに響く青春映画に出会った。真夜中にゴミだらけの部屋でロクヨンをする佐々木の孤独は如何ばかりか。子どもの頃よく遊んでいたのに、大人になってから話が合わなくなった友人のことを思い出す。佐々木よ、さようなら。別れの痛みを糧に、僕たちは大人になる。

井伏鱒二の名訳「サヨナラだけが人生だ」のことばが脳裏をよぎった。おそらくもともとのニュアンスは旧い友人との別れを惜しむ情愛の詩であるが、僕はこれを恋人との別れや、徐々に離れていく友人との距離にも当てはめて読みたくなるのだ。佐々木にはそのままでいてほしい。でも、それでよかったのか。

佐々木と苗村の出会うカラオケの場面、すっごく良かった。二人にとってかけがえのない瞬間だったのだろう。その後を省略するのも品がいい。しかし、これを描くタイミングが残酷なんだよあ。苗村を演じる河合優実はこれから待機作もあるようなので、来年以降ブレイク期待ですね!

あと、萩原みのり演じるユキの別れの言葉ですよね。やさしさに傷つくってことがある。多田の言葉をかりれば「誰のせいでもない」。地元に残った佐々木、ずるずると同棲を続けてしまうユキ。悠二が前に進むためには、ふたりと「さよなら」しなければならない。まだ言葉にできない感情が渦巻いてる。

「Away」感想

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Away、みた。ラトビアのクリエイターが一人でつくりあげた長編アニメーション。飛行機事故を生きのびた少年が、迫りくる巨人から逃げながら、地図の指し示す場所をめざしていく。風ノ旅ビト」をおもわせる抽象的かつ寓意的な世界観。しかしメリハリがないので中盤以降飽きてしまう。映像はとても綺麗。

セリフなし、劇伴も抑えめ。となると完全に「映像」勝負になる。箱庭ゲーム的な舞台設定、散りばめられた死のモチーフや、美しい自然の描写は、最初は目新しいものの、徐々に興味を失ってしまった。良くも悪くも平坦で、個人的には刺激を求めてしまうというか、もう一捻りほしかったかな〜。

付きまとう小鳥たちや、道中で出会う動物たちが、俺には飛行機事故で亡くなった犠牲者たちの化身に見えた。少年がひとりで飛行機に乗っていたとは思えない。きっと、親や兄弟も一緒にいたのだろう。大切な人の死を悲しむより先に「生きねば」となる極限状態。これは人間の生命力の話なのかもしれない。

「滝沢歌舞伎 ZERO 2020 The Movie」感想

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滝沢歌舞伎 ZERO 2020 The Movie、みた。Snow Manの知識はゼロ。たまには変わり種をと。まさしく「奇祭」というべき内容。突然の五条大橋義経!)からの「腹筋太鼓」はすごかった笑 なんでもありのおもちゃ箱。ファン向けではあるが、結構楽しかった。てか、あのアスガルドみたいな未来都市は何!?

なんの脈略もなくパフォーマンスが続く前半。ロングカットのチャンバラは迫力満点。舞台を近くで見ているような感覚。途中のダンストラック、MV風の演出が続くパートもいい。特に「Crazy F-R-E-S-H Beat」はお気に入り。楽曲やダンスはK-POPのマナーも取り入れており、普通にカッコいい。

しかし、照れ隠しなのか、それともこれこそがジャニーズのエンタメなのか、ドラッギーかつ荒唐無稽な演出が続く。金魚鉢の中でアーティスティックスイミングするダンサーがいたり、腹筋太鼓では半身宙吊りになったメンバーが台座ごと回転しながら和太鼓を演奏したり。とにかくイカれてる笑

「五右衛門」のパートではじめて本格的な歌舞伎風の舞台に。後半は時代劇。屋外ロケと新橋演舞場を行き来しながら、チャンバラ劇を紡いでいく。なぜか崖から水が溢れ出したり、よくわからないが楽しいギミック多数。カーテンコール風のエンドロールも良かったな。