映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「ビバリウム」感想

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ビバリウム、みた。新居を探しに内見に来たはずが、郊外の住宅地に閉じ込められ…。いつまで経っても家と子どもに縛られて「解放」されない様は、ローン地獄と終わりなき子育ての比喩か。冒頭に流れるのはカッコウの「托卵」。アイデアは悪くないけど、話のスケール的に短編向きだろう。間延びしてる。

正直、今更このテーマでやって斬新かというと…?結局「子ども」に情が湧いて寄り添おうとするジェマと、得体の知れないバケモノとして退け、ひたすら穴掘りに勤しむトムの対比が面白い。限界まで追い込まれたとき、人は何にすがるかの考察にもなっている。しかし、ここもダラダラやる話か?と。

作品そこそこの時間が経過するが、わざわざ丁寧に描く必要ないと思う。さらっとカットした方がショックは大きいんじゃないかな。ふたりと観客の心情をシンクロさせたくてあえてスローテンポだったのかもしれないが、個人的にはなんとなくオチも察しがついてたので、はやくネタバラシしてよと。

ワンアイデアを貫き、「世にも奇妙な物語」的な面白さを目指すなら、60分ぐらいで終わって欲しかった。世界観は好きだったし。逆に2時間弱の長編にするなら、やっぱり中盤にもうひとつ展開がほしい。いくらこの映画好きになっても、二回目をみようとは思わないんじゃないかなあ。そこに尽きる。

「きまじめ楽隊のぼんやり戦争」感想

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きまじめ楽隊のぼんやり戦争、みた。隣町との戦争がルーティン化した町で、音楽隊に配属されたひとりの男の物語。ファミコンのゲームみたいにカクカク動く人間たち。表情はなく、無意味なことばの応酬を繰り返す。そこには思考もなければ、批判もない。世相を皮肉する姿勢は面白いけど、ちょっと単調?

主演の前原滉はいい顔の俳優だと思った。整ってる、整ってない次元を超えて、とてもスクリーン映えする。きたろう、嶋田久作片桐はいり石橋蓮司…と、個性的な俳優が出揃う。わりとキャストは顔で選んだのではと思ったり。お話しはというと、なかなか前に進まない、カフカの小説のような不条理劇。

シンメトリーで幾何学的な絵づくりも、はじめは心惹かれたものの、慣れてくると面白みが薄れてくる。だからちょっと途中ダレてしまうなと。終盤、「新しい部隊」がやって来てからの展開は興味深い。ピントのズレた会話にクスクス笑ってると、露骨なミソジニーパワハラがブッこまれる意地悪さ。

音楽隊の「盲腸」と「親知らず」のくだりとか、食堂のおばちゃん(片桐はいり)のごはん盛りまくるボケの顛末とか。石橋蓮司演じる町長はとにかく物忘れがひどく、何もしてないに等しいのだが、息子への贔屓は忘れないし、そのせいで煮物屋(嶋田久作)は割りを食っている。日本の縮図である。

「まともじゃないのは君も一緒」感想

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まともじゃないのは君も一緒、みた。とても不器用な映画だと思う。先生は「普通」を知らなすぎるし、香住も全然素直じゃない。この映画自体、話運びがあまりうまくないし。それでも、お互い違う相手を見ているのに恋のゲームを楽しむかのように掛け合うふたりを見るだけで幸せ。また映画館で会いたい。

いろいろ一足飛びの話ではあるんですよね。先生の変人っぷりが薄れていくのはちょっと唐突だし、小泉孝太郎演じる胡散くさい社長やスナックの面々のの使い方もぎこちなく、作り手の都合を感じなくもない。会話劇もときどき話の展開にブレーキを掛けてるように感じる面もあった。

成田凌はすごい役者だと思う。慣れないスーツに身を包み、ぼけっと待ち合わせ場所に突っ立ってるだけで面白い。しかし、そのダサさにある種の色気とチャーミングさがある。憎たらしい悪役からまっすぐな青年までなんでも演じられるし。今回はイラッとさせるような会話の間が絶妙だった。

清原果耶はもう世代トップの役者と言っても過言ではない。広瀬すずが若手女優の筆頭から映画を中心に活躍する一流女優になってしまった今、「ちはやふる -結び-」や今作のようなコメディから「なつぞら」や「望み」のシリアスまで全部こなす彼女は、向かう所敵なしなのでは。成田凌との掛け合いは最高。

清原果耶演じる香住は、真面目にやってるのに、どこか間が抜けているという。先生にずけずけ突っ込むときの小生意気でいたずらっぽい目つきも、恋愛指南にかこつけてカラオケデートしてるときの無邪気な感じも、ぜんぶいい。ふと思ったけど、彼女って「妹」っぽい役、メチャクチャ多いですよね。

世の中の「普通」に対する異議申し立てとしては、少々物足りない映画ではある。もっと芯食った気づきがあるんじゃないかと思ったが。脚本的には反復と円環の構成を志向しているようだが、撮影したり演出したりする側はあまりそこに重きを置いてないのかなと。そこだけちょっと生煮えの感じがした。

それでも俺はこの映画すごく好きです。なんなら明日もう一回行こうかな。先生と香住にまた会いたいから。監督は続編作りたいそうなのでぜひヒットして欲しいし、同じキャストで連ドラも楽しそう。ちなみにカップルがいちゃつく階段は「DASADA」でゆりあが初めて服売った場所でした。

「ホワッツ・イン・ザ・シェッド」感想

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ホワッツ・イン・ザ・シェッド、みた。未体験ゾーンの映画たち2021にて。裏庭の納屋から怪しい声が聞こえてくる。番犬、おじいちゃん…様子を見に行った者がどんどん消えて行き…。ホラー映画あるあるのパッチワークのような映画だが、見えない敵とのバトルが楽しい。でも、警察に電話しろよ!

田舎でくすぶるいじめられっ子、ヤンキーに取られた元カノ(可愛くない)、高圧的な大人…とかなり定型的な話。納屋の中に何が居るのかは冒頭で明かされてしまう。個人的には隠した方が主人公のスタンと同じ目線に立てて面白かったんじゃないかな…と思う(サプライズにするほどの内容でもないが)。

ミザリー」や「ファイナル・デスティネーション」のような例は多々あれど、主人公が男性のホラー映画って、割合としてはそれほど多くない印象。バケモノが納屋に閉じ込められているせいか、基本的にスタンのびっくりシーンがほぼ全て「夢」のパートという…。よく考えると変な映画かもしれない。

ものすごくノイズだったのが、同じシークエンスなのに明らかにカットによって陽の光の角度が違っていて、別の時間帯に撮っているのがバレバレなこと。日が沈みかけた夕日なのかと思ったら、次のカットで昼間になっていたり。せめて照明とカラーグレーディングは調整してくれ。いくら低予算とはいえ。

「ミナリ」感想

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ミナリ、みた。1980年代のアーカンソーに移住してきた韓国人一家の日々を描く。良くも悪くもPlan Bの作品といった印象。まわりには誰も居ない、自分たちだけのエデンの園。寓意性に満ちた設定ながら、淡々と一家の生活をスケッチしていく。ディテールの積み重ねから明らかになる家族のズレが切ない。

ユン・ヨジョン演じる破天荒おばあちゃんを大好きになる。「チンチンが壊れた」を連呼したり、花札?で暴言を吐きまくったり。「クレイジー・リッチ」といい「フェアウェル」といいアジア系の家族を描く作品の軸がマジカルおばあちゃんになりがちなのはなにか理由があるのか…。

教会で子どもに言われる「なんで平たい顔してるの」とか、妙に雑な(おおらかな?)キリスト教の信者たちとか、一家をとりまく環境の不安定さ以上に、不穏な空気が映画全体を取り巻いている。観客はヴィア・ドロローサを再現する「変人」への住人たちの眼差しに不安を覚えたはずだ。

おばあちゃんの「お前は強い子だ」に対するデビッドの「おしっこの味はどうだった?」の会話が好き。きっと大人になっても大切な思い出として残るんだろう。この映画自体、目線が子どもなのだと思う。ファーストカットもデビッドの寝顔。そしてラストカット。すべてをデビッドの回想として見てもいい。

「シティーコップ 余命30日?!のヒーロー」感想

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ティーコップ 余命30日?!のヒーロー、みた。「ヒャッハー!」シリーズや「シティハンター」のチームによるコメディ。あいかわらず倫理観バグったギャグを連発。「ヒャッハー!」シリーズが丁寧に伏線を貼って回収していたのに比べると、単発の笑いが多く散漫な印象も。まあ、楽しかったので良し。

これまでに比べるとキャラが薄い?印象を受けたのは気のせいだろうか。フィリップ・ラショーが気づいたら豊胸手術受けさせられてたのは面白かったけど、彼とジュリアン・アルッティは今回ちょっと存在感がなかったと思う。序盤のラスベガスのくだりはもっとタイトでよかった。

赤ちゃんや動物も容赦なく理不尽な目に晒される。好みの分かれ目かもしれないが、いつも通りの不謹慎さで俺は好き。ピタゴラスイッチみたいな暴力が楽しい。ボケの手数が多いし、隙間なく詰め込むので退屈しない。いやあ、楽しかった。彼らの新作も楽しみです。

「モンスターランナー 怪物大戦争」感想

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モンスターランナー 怪物大戦争、みた。未体験ゾーンの映画たち2021にて。怪物が見えてしまう孤独な少女と落ちこぼれハンターが世界の運命に立ち向かう。いかにも中華風のカルチャーと怪物の世界観の融合が面白い。作りたい画に予算と演出の技術が追いついてないが、ほどよく楽しめた。途中寝たけど。

主演のジェシー・リーが可愛い。怪物が見えるせいで親に捨てられ、精神病院に入れられてしまった少女を演じているが、この儚さと、いろいろ誤解されてしまいそうな弱さの塩梅がハマっている。ショーン・ユーのハードボイルドなハンターっぷりも良い。紙の怪物もコミカルかつユーモラス。

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ただ、怪物の描き方は単調。ラストバトルは「ドクター・ストレンジ」っぽかったけれどもひねりがないので飽きてしまう。冒頭のスーパーでの対雪男戦がいちばん面白かったかもなあ。あと、空間操作されて駐車場でループするパートもギミックに溢れていて楽しかった。演出も稚拙だが、予算さえあれば…。