映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「ハニーレモンソーダ」感想

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ハニーレモンソーダ、観た。傑作!最近の少女マンガ原作映画でも最高級に良いのでは?ラウールくんはクールだけど、スカさないカッコよさ。あの笑顔にはファンでもないのにキュンキュンしてしまう。「俺ね、空飛べるんだ」と言うときのやさしい表情にハマる。ジリジリと距離を詰めていく描写も丁寧だ。

ほかと比較すると怒られるかもしれないけど、ことし公開されたジャニーズ主演の恋愛映画がいずれもクールな「オレ様キャラ」だったのに対し、本作の界くんには繊細さがある。女の子のことを蔑ろにしない、振り回したりせず、常に寄り添っているところに好感を持った。笑顔が可愛い。「石森係」いいね。

いちばん良いのは、物語に変化を与えるためだけの「鞘当て役」が登場しないこと。堀田真由や濱田龍臣の役は、悪役に振り切っても違和感ないし、現に揺さぶりをかける場面もあるのだけど、基本的には気持ちのいい人物なのだ。その微妙な綱渡りをふたりは見事に演じきっている。これぞ「上手い脇役」。

ラウールの相手である吉川愛はとても良い。去年は「恋はつづくよどこまでも」に始まり、「転がるビー玉」や「のぼる小寺さん」で着実に名前を売ってきた。「ラーヤと龍の王国」の吹き替えでも魅せた「陰」の演技が光る。本作では何度も「涙」の場面があるが、上手いこと毎回アプローチを変えている。

岡本夏美は「賭ケグルイ」のイメージしかなかったが、こんなに芝居の上手い人だったんだなと思った。この映画でいちばんの収穫といったら彼女の輝きだろう。「#ハンド全力」で好演をみせた坂東龍汰とのとある場面での掛け合いには拍手したくなりましたね。あそこ良かったな〜。いちばん好きかも。

あとボール蹴るだけでゴール決まるだろっていう位置でジタバタするのがこの映画の面白さであり、そのあとの展開を考えると、ちょっと贅肉が多かったかなと思わなくもない。フツーに前半で終わると思ったらそのまま続いたのでビビった。あるいは前半をもっと肉付けしても良い。ちょっと中途半端。

まあ結局のところこの手の映画は主演のふたりにハマれるかですよね。ラウールも吉川愛も顔が好みなので、これは傑作です。ここ数年だと「L・DK ひとつ屋根の下、「スキ」がふたつ。」や「私がモテてどうすんだ」が面白かったけど、これもそれに並ぶかもなあ。

「アルジェの戦い」感想

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アルジェの戦い、観た。フランス統治下のアルジェリアが独立を勝ち取るまでを描く。5年の歳月をかけ、8万人のエキストラを動員した映像の迫力と生々しさに衝撃を受けた。無差別テロの酷さ、民衆が社会を動かすエネルギー、フランスの恥部、ぜんぶ描く。これはオールタイムベストに入れたい一本…!!

物語の終盤のワンシーンを冒頭にもちこむ時系列の入れ替えや、ほぼオールロケでの屋外撮影、カメラの手ブレから生まれる臨場感など、わりと現代的な演出が光っていたと思う。権力に押し潰されそうな抵抗勢力と、その内側の怒りや焦燥感は、アメリカン・ニュー・シネマ的な手触りもある。反戦の精神も。

無差別テロのシーンは本当に声出てしまった。演者のすぐ脇でホンモノの爆発を起こしてるし、そこに人が集まる様子もニュース映像を見ているようだ。この映画は独立派のゲリラ戦を必ずしも肯定的に描いておらず、無垢の市民や赤ちゃんすらこの血に塗れた争いに巻き込まれた事実を隠さない。

さっきアメリカン・ニュー・シネマと書いたけど、どっちかというとネオレアリズモの方が近いかもしれない。「無防備都市」とか、そこら辺ですよね。アリのギラギラした佇まいが良かったなあ。暴発しそうなヒヤヒヤ感がある。そして、そのエネルギーこそ民衆に受け継がれる闘争心の源なのだと。

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あと冷徹なフランス軍の司令官・マチュー中佐もよかった。コイツにはコイツなりのロジックがあり、忠実に任務を果たしているのだとわかる描き方。特に「拷問」の有無を記者に訊かれた中佐が、「向こうのテロはどうなんだ」と煙に巻く場面は、この残酷な戦いのすべてを表している気がする。

カスバの入り組んだ地形と街並みも、十分に魅力的だ。ヨーロッパ人街の整然としたパリのような風景とは大違いである。テロが効くのは最初だけだとか、革命を続けるのは革命を始めるより難しいといった言葉には、現代に通ずる重みがある。しかし、この映画に込められたパワーを信じたくもなる。

「プティ・カンカン」感想

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プティ・カンカン、観た。海岸沿いの静かな村で、バラバラ死体が詰め込まれた牛が見つかった。ポンコツ憲兵隊長と、地元少年・カンカンはそれぞれ事件を追い始めるが、やがて連続猟奇殺人に発展し…。さすがに3時間半は長いが、最後までするりと観れてしまう不思議な空気感。この村には悪魔がいる。

演者はみんな地元の素人らしい。ブリュノ・デュモン監督作品は初めて観たが、彼らでしかあり得ない存在感を演出するのはすごい。アホみたいなタイトルに反して(直接映像に出ることはほぼないものの)内容はグロい。憲兵隊長のプライド高い無能っぷりがすばらしい。すぐ「バカにしてる」言うし笑

教会での葬式の不謹慎なおふざけ(何度も鐘を鳴らす笑)や、とても先に進む気がしない取り調べ。いばり散らすためにすぐ拳銃を取り出す憲兵隊長はどうかしてるが、明らかにこっそり彼をバカにしているガルパンティエのナメ腐った態度が面白い。そして、憲兵隊長は全然それに気付かない笑

カンカンまわりのエピソードはもっと本筋に絡むのかと思ったが、事件や捜査とは妙な距離感を保ったまま並走する。ゴーカートでおっさんのカートにガツガツぶつけまくる悪ガキっぷりに笑う。しかし、彼の父親の煩さよ。輪投げの感覚で皿を並べるおじいちゃんが面白い。

掴みどころのない映画ではあるのだが、ほのぼのとした田舎の風景に、明らかに異物感のある猟奇殺人が連続するこの空気感はクセになる。なにも変わらず、なにも解決しないこのダラッとした地獄のような時間の流れに、底知れぬ闇が潜んでいた。

「トゥモロー・ウォー」感想

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トゥモロー・ウォー、観た。未来人から地球滅亡の警告を受け、世界規模の徴兵が始まる…。期待以上に面白い。近未来SFとしてツボを抑えたデザイン、シューティングゲーム的ミッションとアクションシーケンス、そして、単なるクリーチャーモノに終わらない物語。配信で見るのにちょうど良いサイズ。

昼間の市街戦って、ハリウッドのSF映画は意外とあんまりやりたがらないので、これがあるだけで十分に見応えがあった。ほとんどずーっと見せ場みたいな映画だが、特にこの「戦場に巻き込まれるスリル」はすばらしかった。そして、何度も言うようだがステージの移り変わりがゲームっぽい。

まあただお父さんと娘の愛の物語、父性にまつわるアレコレはさすがにもう飽きてくるとは思った。クリス・プラットのお父さん(別にサプライズでもないけど、一応名前伏せとく?)は、最近この手の役が少なかった気がするので、逆に新鮮。個人的にタイムスリップするときの描写がお気に入り。

「誤発弾」感想

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誤発弾、観た。朝鮮戦争で傷ついた家族が、貧困に喘ぎ、崩壊していく様を描く。「漢江の奇跡」より前、この国がどれだけ悲惨であったかを知った。ロッセリーニヴィットリオ・デ・シーカらのネオレアリズモ的な手触りがある。解放村の家があまりにみすぼらしかったが、果たしてあれがリアルなのか…。

誤発弾、観た。朝鮮戦争で傷ついた家族が、貧困に喘ぎ、崩壊していく様を描く。「漢江の奇跡」より前、この国がどれだけ悲惨であったかを知った。ロッセリーニヴィットリオ・デ・シーカらのネオレアリズモ的な手触りがある。解放村の家があまりにみすぼらしかったが、果たしてあれがリアルなのか…。

歯医者行けない、親知らずも抜けない、善良であろうと努めても一向に豊かにならないこの生活で、なにを糧に生きていけばいいのか。あの松葉杖の男も悲惨だし、チョルホの弟も、その恋人も、どうしてその道を選んだのかと責められないほど、どん詰まりの世界を生きている。

日本が朝鮮特需で高度経済成長への弾みをつけたことを思うと、その裏で蹂躙されていた彼らに何も言えなくなってしまう。韓国映画100選の一位にも選ばれたことがあるらしい。もっと他に面白い映画ある気はするが、たしかに歴史的価値があるし、非常に衝撃的ではあった。今からは想像できない世界。

あと、言われてみれば確かに「誤発弾」の解放村の一家は、「パラサイト 」における半地下の家族と重なるところがある。韓国の歴史の中で、一本の線として繋がっているのではないか。

「ゴジラvsコング」感想

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ゴジラvsコング、観た。楽しかったですね〜。冒頭ちょっと眠かったけど、エイペックス本部に乗り込むあたりから俄然盛り上がる。ネオンに照らされた二大怪獣のバトルは燃えました。人類の危機なのにみんな個別行動、現場の頑張り(物理)でなんとかなってしまう雑なドラマパートも、すべて怪獣のため!

わりと怪獣たちの動きは軽やかで、小まわり利きすぎなのではとも思ったけど、重量感ある劇伴とサウンドエフェクトがそれっぽく中和している。あと、ガジェットやクリーチャーのデザインにはまったく惹かれない。ヒーブのルックなど無個性の極みだろう。あんまり力が入っていないように感じられた。

小栗旬の使い方が勿体なさすぎる。途中、制作方針の転換で撮り直しとなり、出番が大幅に削られたらしいが、本人がインタビューではっきりと消化不良であると語ったのも納得だ。芹沢博士の名を使う必要もない。彼の演技を知っている人なら、もっとできたはずとみんな思っただろう。次あるかな〜。

2021年上半期ベスト(旧作)

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旧作・邦画
①おやすみ、また向こう岸で
②螺旋銀河
③息の跡
バトル・ロワイアル
⑤晩春
近松物語
⑦あいが、そいで、こい
⑧ゆがんだ月
おくりびと
⑩親密さ

 

旧作・洋画編
①鳥🇺🇸
ローズマリーの赤ちゃん🇺🇸
桜桃の味🇮🇷
希望のかなた🇫🇮
⑤見知らぬ乗客🇺🇸
⑥幸福なラザロ🇮🇹
遊星からの物体X🇺🇸
スミス都へ行く🇺🇸
⑨アップグレード🇺🇸
⑩ラジオ・コバニ🇸🇾