映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「プティ・カンカン」感想

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プティ・カンカン、観た。海岸沿いの静かな村で、バラバラ死体が詰め込まれた牛が見つかった。ポンコツ憲兵隊長と、地元少年・カンカンはそれぞれ事件を追い始めるが、やがて連続猟奇殺人に発展し…。さすがに3時間半は長いが、最後までするりと観れてしまう不思議な空気感。この村には悪魔がいる。

演者はみんな地元の素人らしい。ブリュノ・デュモン監督作品は初めて観たが、彼らでしかあり得ない存在感を演出するのはすごい。アホみたいなタイトルに反して(直接映像に出ることはほぼないものの)内容はグロい。憲兵隊長のプライド高い無能っぷりがすばらしい。すぐ「バカにしてる」言うし笑

教会での葬式の不謹慎なおふざけ(何度も鐘を鳴らす笑)や、とても先に進む気がしない取り調べ。いばり散らすためにすぐ拳銃を取り出す憲兵隊長はどうかしてるが、明らかにこっそり彼をバカにしているガルパンティエのナメ腐った態度が面白い。そして、憲兵隊長は全然それに気付かない笑

カンカンまわりのエピソードはもっと本筋に絡むのかと思ったが、事件や捜査とは妙な距離感を保ったまま並走する。ゴーカートでおっさんのカートにガツガツぶつけまくる悪ガキっぷりに笑う。しかし、彼の父親の煩さよ。輪投げの感覚で皿を並べるおじいちゃんが面白い。

掴みどころのない映画ではあるのだが、ほのぼのとした田舎の風景に、明らかに異物感のある猟奇殺人が連続するこの空気感はクセになる。なにも変わらず、なにも解決しないこのダラッとした地獄のような時間の流れに、底知れぬ闇が潜んでいた。