「僕たちは希望という名の列車に乗った」感想(ツイッターより再掲)
僕たちは希望という名の列車に乗った、みた。大傑作。東ドイツの高校生がポーランドの革命に捧げた2分間の沈黙が、やがて国家を巻き込む事件へと発展していく。国家に隷属して安泰を手に入れるか、それとも信念を貫いてすべてを捨てるか。いつの時代も大人は、そして権力は、若者から言葉を奪うのだ。
全体主義と自由主義、教師と生徒、そして父親と息子。テオ、クルト、エリック、レナの4人を中心に、人生と信念の選択に揺れ動く子どもたちが描かれる。彼らは時に連帯し、時に分裂するが、決して悪者はいない。背景も思想も異なる者たちが団結することの難しさ。
「勇気がない」ことは責められるべきことなんだろうか?ひとは様々なしがらみの中で生きている。しかし、あの19人には「希望」がある。国家を敵に回しても、味方してくれる仲間たちがいる。実話をベースにした内容でありながら、緊張感は途切れず、一人ひとりの生徒の顔に寄り添う。丁寧な群像劇。
子どもは親を指差し「あんなつまらない大人になりたくない」と嘆く。しかし、彼らにも子どもには見せない顔がある。守るべきものがあり、重圧と責任の中でもがいている。単なる二項対立にはなっていない。自由は戦って勝ち得るものである。新たな分断と抑圧の時代に彼らの物語はひときわ輝いて見える。