映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「これは君の闘争だ」感想

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これは君の闘争だ、観た。激動の2010年代ブラジルで学生運動に身を投じた三人が当時を振り返るドキュメンタリー。教育を受ける、当然の権利のために子どもたちが闘わなければならない社会って、一体何なのだろうと泣きたくなってしまった。しかし、そこに確かにある「自由」に感動を覚えたのも事実だ。

この映画を見る前はもっと「政治運動の希望」みたいな話だと思ってたら、じつは全然違くて。むしろ、まだ選挙権すらない子どもたちが、自分の場を守るために闘わなければならない、根っこから間違ってるとしか思えないこの社会のあり方に絶望する映画であった。催涙弾ひとつで給食500食分。

学校の立てこもりも権利の主張であり、格差との闘いなので、「ぼくらの七日間戦争」みたいな牧歌的なものでは当然ない。しかし、この特殊な環境で生まれる連帯は、文化祭的な朗らかさもあり、たしかに彼らにとっての青春でもあるのだとわかる。しかし、青春がこの場でなければならないのか、とは思う。

彼らの「自由」は溺れかけた人間の「息継ぎ」のようなものでしかない。だが泳ぎ方を覚えて、徐々にではあるが前に進んでいる。ボルソナロの暴挙により、再び社会は混沌に突き進んでいるが、希望のバトンは受け継がれている。

日本との対比でブラジルの若者は政治に主体的に参加している…と比較したくなるかもしれない。しかし、彼らの置かれている状況、主張している権利はもはや「教育を受ける権利」にとどまるものではなく、「生存権」をめぐる戦いと言っていい。もっと言えば、これは階級闘争の歴史だ。