映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「柔らかい肌」感想

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柔らかい肌、観た。不倫男の二重生活を描くサスペンス。ピエールを演じるジャン・ドサイの頼りない顔がすばらしい。お前どう考えてもウソは下手だし不倫できるほど図太くないだろ、っていう笑 扉の手前と向こう側、見る/見られるの関係…。真夜中にパリに向かって走る車中の緊張感も最高。大傑作。

フランソワーズ・ドルレアックは惚れ惚れする美しさだが、内面は妙に子どもじみていて、その危うさがまた魅力的だ。そして、何度も言うようにピエールがこの人をうまく扱えるとも思えない笑 空港まで押しかけてラブレターを書くけど本人に会ったので、こっそり捨ててしまう。その手を撮るのが面白い。

田舎町の講演会にニコルを連れて行く中盤の場面。ピエールは思わぬ歓待を受け、ふたりでホテルでぬくぬく過ごそうという思惑は見事に打ち砕かれる。この男は浮気をするわりに主体性がなく、その場の流れに巻き込まれてどんどん不利な状況に追い込まれる。会食は断れず、友人には飲もうと絡まれる。

階段でニコルを見かけで無視する、ビストロに連れ込まれると外を気にしてキョロキョロし、にっちもさっちも行かなくなってやっと友人をまき始める。この男は誘いを断れない。さらに言えば、終盤、妻に復縁を迫ろうと決意するのも、友人夫婦の説得を受けて、である。あの結末は必然だと言っていい。

結末を知った上で思い返せば、この映画はずっと不穏だった。終わりに向かって突っ走るような予感がするのだ。飛行機に乗り遅れそうになって空港の窓口に駆けつけるOPから常にピエールは一歩「遅れている」。彼は遅れそうになったおかげでニコルに出会い、決断が遅かったせいでフランカに射殺された。