映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「愛がなんだ」感想(ツイッターより再掲)

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愛がなんだ、傑作。マモちゃん中心の生活を送るテルコ。でもマモちゃんは彼氏じゃない。この映画に出てくる人はみんな愚かで、不器用で、そして孤独だ。どうしようもない自分を正当化したり、逃げ水のように離れていく相手を追いかけたり。切ないけど、傷つき苦しむ自分を抱きしめたくなるような作品。

とにかく生々しいんだな。東京の片隅でこの夜にも起きていそうな、小さなドラマ。テルコを演じる岸井ゆきのは、キョロキョロと小動物のように動き、周囲の様子をうかがう目つきと、いつも素直に感情が漏れてしまう口もとの緩さが特徴的だ。成田凌との身長差も良い。背が低くて童顔なところも合ってる。

成田凌の憎めないクズっぷり。テルコの目を通して見たときの愛おしさと、すみれさんを前にしたときの卑屈っぷり。「なんでこんな人好きになる?」と言いたくなるのもわかる。けど、放って置けない可愛さがあるし、彼にもまたどうにもできない弱さがある。

「知らない、ふたり」でも同じ印象を抱いたけど、ちょっと突き放す演出がおもしろい。カメラは固定、人物は少しだけ距離を感じる遠さのところに座っている。じっくりと長回しで映すのは、ぎこちなくすれ違う大人たちの会話。このズレを知るのはわれわれ観客たちだけ。こののぞき見感がたのしい。