映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「アマンダと僕」感想(ツイッターより再掲)

f:id:StarSpangledMan:20190714182243j:image

アマンダと僕、みた。テロで母を失ったアマンダと彼女を引き受けることになったダヴィッド。時間はゆっくりと流れていく。あたたかいフィルムの質感が平凡な日常と突然の喪失を、残酷かつ穏やかに繋いでいく。まだ終わりじゃない。よろこびも悲しみも一緒に分かち合っていこう。アマンダの笑顔に泣く。

物語はダヴィッド目線で進むけど、原題は「AMANDA」なのよね。これはダヴィッドが他人の人生を背負う覚悟を決めるまでの物語だ。他人の子、姪っ子だから可愛がれるというのは残念ながら事実だと思う。彼女がまっすぐ大人に育つまで見届けなければならない。当然重荷にもなる。綺麗事だけじゃない。

だから、冒頭では穏やかでのんびりとしたやりとりを交わす二人も、サンドリーヌの死後、やはりどこかぎくしゃくしている。お互いどうなってしまうのか、不安を抱えながらの毎日。本心を語れなくなってしまった息苦しさ。当然、根本にあるサンドリーヌの死にはふれられない。

ダヴィッドはアマンダだけでなくレナの人生にも責任を持つことになる。母を亡くした姪っ子の「家族」になる。この決断には勇気が必要だ。ダヴィッドの全身からあふれる「いいヤツ」感は大好きだけど、頼りがいがあるとは言いがたい。お迎えの時間には遅れるし、自分のことで精一杯。

なよっとして未熟な頼りなさなが、やわらかい包容力と優しさに変わる。なんども登場する自転車の場面もよい。サンドリーヌとの並走は爽やか、ピクニックへ向かう場面では突然音楽が途切れ、不穏な結末を暗示する。そしてアマンダとのレース。文字通りふたりで一緒に「走っていく」のである。

アマンダの笑顔がとっても素敵。バリエーションの豊かさ!子役の演技のレベルの高さが出ている。ドッジボールで遊ぶところにダヴィッドがやってきた瞬間、パッと明るくなる彼女の表情。なんと愛おしい。そしてウィンブルドン。母の遺した言葉が、いま目の前の試合によって塗り替えられる。

けっして派手ではないが、しんみりと爽やかな後味の残る結末。まだ終わりじゃないよ。いまは劣勢かもしれないけど、きっとすぐに逆転するよ。大丈夫大丈夫。子どもに未来を託すラスト。