映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「わたしは光をにぎっている」感想

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わたしは光をにぎっている、超絶大傑作!長野から上京した澪は身を寄せた銭湯を手伝い、苦労しながらも街に馴染んでいくが…。街並みは激しく移り変わり、先人たちの生きた証は上塗りされていく。それでも、人びとの営みとその温もりは永遠なのだ。

家から駅までの道に、いつのまにか新しい建物が建てられている。毎日歩いていたはずなのに、昔何があったか思い出せない…ということは往々にしてあると思う。でも、そこも誰かが暮らしていたり、働いたりしていた場所で、きっと誰かの大切な思い出の一部だったりするんだよね。街は呼吸しているのだ。

東京オリンピックまで残り1年を切った。「天気の子」で新海監督が描いたように、東京という街はいま目まぐるしく変わっている。あちこちで工事が行われ、古くてつぎはぎだったビルや道路を、また新たにつぎはぎしようとしている。また、海外からたくさんの人が職を求めてやって来ている。

ここ数年で本当に大きく変わったと思う。現代的なビルが立ち並ぶ一方、再開発で丸ごと消え去っていく街区もある。たとえば渋谷の桜丘。ぎっちり並んでいた雑居ビルたちが根こそぎ潰されて、あっさり更地になってしまった。この土地に染み込んでいた人びとの営みの匂いや汚れはどこかへ消えた。

「わたしは光をにぎっている」の舞台は葛飾だが、この映画で描かれている住民たちの生活感は、ものすごく現代的で、リアルな実感に根付いたものだと思った。たとえば徳永えり演じる会社員のくたびれ感。ラーメン屋に通ってるところとか。普段に何やってるかとか、いろいろ想像したくなるよね。

自分の知っている場所が消えていくということは、自分の身体の一部が削られていくことに等しいと思う。なじみのお店がなくなると、やはり寂しい。誰かが記憶にとどめていない限り、その街の匂いや温度、人びとの繋がりは失われていってしまう。そこにあったことすら忘れてしまう。それは悲劇だと思う。