「友だちのうちはどこ?」感想
友だちのうちはどこ?、超絶大傑作!間違えて持ち帰ってしまったノートを返すため、友だちの家を探しまわるアハマッドの冒険。ただ、それだけ。なのにめちゃくちゃ面白い!子どもの見る世界ってこんなにも広く、そして狭いのか。大人は口うるさい、力で押さえつけようとする。押し花に思わずほろり。
あっちの村とこっちの村を行ったり来たり。ジグザグ道を渡り、ロバを追いかけ回し、犬の吠える路地を怯えながら歩く。あしたまでにノートを返さなかったら、友だちが退学になってしまうかもしれない。本当に友だちの家は見つかるのだろうか。しょーもない話だが、一級のサスペンスになっている。
コケルとポシュテ。ちっぽけなふたつの村。そしてノートをネマツァダに返すこと。彼にはそれだけしか見えていない。それが世界の全てなのである。大人から見れば、すごく狭いところでぐるぐる回っている。けれども、彼からすればわからないことだらけ、理解できないものにあふれた広い広い世界なのだ。
「ノートに書くことが大事」と繰り返す先生。息子の言うことはさっぱり聞かず「宿題をやりなさい」と叱り続ける母親。子どもを「げんこつ」で押さえつける祖父。抑圧的で形式的な大人の社会。一方、何も考えてなさそうでいつも不安げな表情をしているアハマッドだけど、彼は本当の優しさを知っている。