映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「THE BATMAN ザ・バットマン」感想

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ザ・バットマン、観た。面白かった!現職市長の殺害事件を追うブルースとゴードンが、ゴッサムを揺るがす真相に迫っていくスリラー。徹底したフィルム・ノワールの質感と、腐った下水の臭いが漂ってきそうなゴッサムの景観。闇に紛れて光るロバート・パティンソンの青白い肌。ずっと浸ってられる世界。

ブルースはまだバットマンを乗りこなせていない。ウイングスーツで滑空を試みても、うまく飛べないのだ。狭っ苦しい事件現場に、制服警官に囲まれながら現れるバットマンの異物感。まだこの街の象徴になる、コウモリのコスプレをした奇人。ひとりでバットシグナルを送るゴードンの鼻つまみ者感。

ブルースがいつもの邸宅ではなく高層ビルに住んでいるのも珍しい気がする。キャットウーマンを演じるゾーイ・クラヴィッツの妖しさよ。リドラーの考えの浅い計画は、ポール・ダノの「カリスマ性のなさ」によって、かろうじて現実味が保たれている(でも「ラブ&マーシー」ではちゃんとカリスマだった)

なぜゴッサムは根っこから腐っているのか?の丁寧な紐解きがあるが、ここはとても良かった。この街の悪はブルース・ウェインの人生と不可分なのだ。ペンギンの造形もちょうどいい。ジェフリー・ライト演じるゴードンも渋くて好きだったな。「セブン」モーガン・フリーマンを思い出す人は多いはず。

ただ、すでに指摘する人もいるように、後半が少々人情話に寄っちゃったかな〜とも思う。「ここが俺の街、ゴッサムなんだ!」ってことなんだろうけど。なぜゴッサムから犯罪がなくならないのか?いつまでもヴィランを取り除けないのか?と言ったら、それは人間が本質的に邪悪だからだと思う。

善悪の二項対立ではないはずだ。ブルースが非常にグレーな線引きのヴィジランテなのは、まさしくそういうテーマの中心的存在だからなのでは。しかし、一方でバットマンが「闇そのもの」のヴィジランテの線を越えて、明確に「ヒーロー」になる瞬間はあるべきで。ブルースは陽の光を浴びなきゃいけない。