映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「チワワちゃん」感想

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チワワちゃん、みた。空虚で自滅的な青春。誰も「チワワちゃんとは?」の問いに答えられない。振り返ってみると何もないモラトリアム。少し身に覚えがある。しかし、ここで描かれる「酒と女と金」の大学生って2019年の世界とは少し違う気がする…と思ったら、バブル期の小説の翻案らしい。

俺はああいう煌びやかなナイトライフに縁がないので、まああなたにはその世界見えてないよねと言われたらそれまでなのだけど。ちょっと味付けに古臭さを感じた。人びとの注目やモノに囲まれても満たされない心という切り口、どうにも俺の感覚と乖離している…。

冒頭でチワワちゃんたちが盗む600万円っていう金額の規模感がリアルですよね。あの人数で使おうと思ったら意外に少ない。で、あそこでああいう国内で使い切る感じ、ちょっとバブル。物語は途中行き先を見失ったように思えたが、浅野忠信の登場で一気に締まる。子どもの世界に割り込んでくる大人。あのニヤつきがいやらしい。

チワワちゃんの死から、仲間とつるんでは飲み、恋人を取り替えたり、あるいは業界に片足を突っ込み…というかつての日々を振り返り、結局なんだったんだろう?と考える。しかし最後まではっきりした答えは出ない。時間が無限にあるように思える。変化も好まない。同じところをぐるぐる回っていたのだ。

終盤、時折テロや暴動のニュース映像が画面に映り込む。カタストロフの予感?チワワちゃんの死で世界は変わらないし、あれからしばらく経ってみんなの傷も癒え切っていないけど、彼女がバラバラになって沈んだこの東京湾につながる遠い海の向こうでは、確実に何かが始まっている。時は絶対に進む。

かならずしも自分たちの青春を思い出して「あの頃は良かったなあ」と浸りきれない苦々しさがこの映画の肝で、その象徴が「チワワちゃん」なのではないか。なんだったんだろうね〜って、チワワちゃんに差した指はそのまま自分に返ってくる。バラバラに切り刻んで海の底に沈めたってまた浮いてくるんだ。

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チワワちゃんにたいする社会の批判に、どうしてそんなこと言うの!なにも彼女のこと知らないくせに!と憤る彼らの意識の底には、彼女だけでなく彼女と過ごした時間を否定されたくない、肯定したい、という想いがあるのではないか。ムダではないけど、ホントに良かったのかなこれでという後悔。