映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「書を捨てよ町へ出よう」感想

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書を捨てよ町へ出よう、みた。「スクリーンの中は空っぽだ」の挑発的文句から始まる実験映画。第四の壁を破り、ゲリラ撮影を挿入し、シーン毎の連続性を解体する。セリフも聞き取りにくいし何やってるのかよくわからないのだけど、総体としてこのカオスを楽しんだ。しかしこの世代はよく怒ってるな…。

般若神経のベッドと誰かの泣き声を背景に絡み合う男女、新宿の雑踏に設置された男性器のサンドバッグ、服を脱いで合唱する女子高生…理解されることを拒むかのような映像の集合体。なにを見せられているんだという気分に笑 しかし最後の演説には心打たれた。映画は嘘だ。暗闇の中でしか生きられない。

「書を捨てよ町へ出よう」というタイトルの解釈は、どうやら詩のほうも読まないと満足には出来なさそうである。鬱屈したダメ人間の叫びは、なかなかに胃もたれがする。「三島由紀夫vs東大全共闘」を見たときも思ったけど、この世代は本当によく怒っている。プロテストこそ価値と言わんばかりに。

渦巻く思春期の感情を行動に移すそのエネルギーを尊敬すると同時に、なにが彼らを突き動かしたのかわからなくて、別の生き物を見ているような感覚にも陥る。なによりこの時代のムーブメントが必ずしも未来に引き継がれなかったから、俺は彼らに不信感を抱いてもいるのだけど。

でも「人力飛行機で空に逃げたい」はわかる。俺は寺山修司に書を捨て、祖国を捨て、お前で戦えと言われているのだろうか。エンドクレジットがまさかの名前ではなく顔写真という。なかなか面白い演出もあり、見ごたえはたっぷりでした。