「ドキュメンタリー沖縄戦 知られざる悲しみの記憶」感想
ドキュメンタリー沖縄戦 知られざる悲しみの記憶、みた。生存者の証言で紡ぐ沖縄地上戦の記憶。凄惨のひと言に尽きる。潜水艦に沈められた対馬丸の話が恐ろしかった。醤油樽にしがみついて数日漂流するなんて。空から爆弾が降ってきて、仲間内で殺し合って…がたった75年前の話なのだ。信じられない。
チビチリガマとシムクガマで明暗が分かれた話も印象的。前者に逃げた住民たちは〈鬼畜米英〉のプロパガンダを信じたがために集団強制死に追い込まれた。一方の後者は英語が分かる人がたまたまいたため、米軍兵と交渉を経て、最終的に全員が生存した。この違いは何だ。「なぜ?」の問いに答えはない。
でも、問わずにはいられないし、問わなければならないのだと思う。御真影と教育勅語。この映画は沖縄戦激化の根本的原因を軍国主義と皇民教育に求める。それもまたひとつの解であろう。沖縄戦の概要は知っているけど、改めて経験者のリアルの話を聞くと、その恐ろしさに表現する言葉を見つけられない。
ことしも閣僚の靖国神社参拝や玉串料奉納がニュースになっている。戦後の総括もおざなりなままに再び「先進国」に返り咲いたニッポン。コロナ禍の諸々の対応を見るになぜこの国が戦争に突っ走ったのかが分かるし、また同じ過ちを繰り返すのだろうと思う。結局自分で痛い目を見ないとわからないんだ。
ガマの中で娘のクビを斧で切った母の気持ちや、沈みゆく船で重油にまみれながら溺れ死んだ子どもの恐怖が、俺には分からない。どれだけ一生懸命想像しても。でも、たしかにそれは現実に起きた。死にたくないと想いながら人生を終えた人がいる。そのことがあまりに悲しい。せめて二度と同じことは…。