映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「幸福なラザロ」感想

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幸福なラザロ、みた。社会から隔絶された農村で暮らしていたラザロが、とある事件を経て、数十年ぶりに現代に「復活」する…。ふしぎな映画だ。平衡感覚をうしなった。はじめは時代背景がわからず、いったいこれは何の話なのだろうかと。それが「聖人」として蘇るあたりから一気に様相が変わる。

ラザロの目を通して描かれるのは、何十年経っても変わらない搾取の構造。ザラついたフィルムの質感が、時代性を抽象化し、却ってこの構造が普遍的であることが浮き彫りになる。ラザロはあまりにピュアであるがゆえに、社会から弾き出されてしまう。ラストシーンは忘れられないなあ。彼の涙の意味は?

大人になったタンクレディの絶妙なうさん臭さがいいですね。狂言誘拐で無茶やりだしたときから、ほとんどなにも変わっていない。そして、あんな人間を信じる方がまずいだろうと思うが、それでもラザロは純粋に彼のあとを追う。ウソを知らないラザロ。教会から「音楽がついてくる」場面は非常に好き。