映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「野球少女」感想

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野球少女、みた。「女性にしては」の枕詞がつきまとう。プロ野球選手を目指してガラスの天井に抗う高校生の物語。「梨泰院クラス」でおなじみのイ・ジュヨン、すばらしい役者ですね。深めに被ったキャップからのぞく目つきの鋭さ!主人公のことが好きで堪らなくなった。小品だが、熱く爽やかな作品。

イ・ジュヨンの華奢な身体はプロ選手を目指すにはあまりに細すぎて、残念ながらスポーツ映画としての説得力はあまりなかったのだが、逆にあの心許ない佇まいがまわりの大人の「いやいや、やめとけよ」というリアクションを際立たせていたと思う。しかし、演技は体格だけでするものではない。

何度も失望しながらも、立ち上がる力強さを、イ・ジュヨンは小さな身体で表現していた。頭ごなしに否定するコーチーに対する、怒りを含んだ目つき。母親と接するときの刺々しさの残る口調。そして、マウンドでの風格。この手の映画は主人公を応援したくなることが大前提だけど、その点では満点だった。

いい意味で「厭だなあ」と思ったのは、誰もみんな表立って「女だてらに」とは言わないこと。そもそも男でもプロになるのは難しいのに、実力あるの?と。たしかにその考えも間違いではないし、プロになれなかったコーチや、お金のやりくりに苦心する母親の言葉は、スインの将来を心配したものでもある。

しかし、スインが同じ実力の男の子だったら、まったく同じリアクションだったのだろうか。これは男/女という「区切り」に限った話ではないが、結局のところ前例がない、誰もやったことがないから、まわりの大人も背中を押せないのである。変に夢なんてさせたら無責任じゃないかと。

あと、映画としてはヘタに恋愛要素を絡めなかったのがよかった。スポ根モノ(この作品は根性よりいかに立ち回るかにフォーカスがあったけど)に恋愛は必須でないよな、と。そして、戦い続けることは決して自分のためだけではない…と伝わるお話になっていたのもよかった。品のいい映画だったと思う。