映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「キャンディマン」感想

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キャンディマン、観た。鏡の前でその名を五回呼ぶと男が殺しにやってくる…。地元に伝わる都市伝説をインスタレーションにした主人公は「彼」を甦らせてしまう。僕たちが「呪い」や「恐怖」で片付けてしまうものの先に、ホントは何かあるんじゃないかと思わせる。ラストの凄惨かつ軽やかな「反転」よ!

最近でいえばジョージ・フロイド事件、少し遡ればロドニー・キング事件、さらに昔に行くと…と、罪のない黒人が殺されたり、暴力を受けたりした事件は、おそらく数え切れないほど存在する。その惨さや愚かさを伝えるために、ホラー映画のフォーマットを使う。ジョーダン・ピールの手法が活きている。

ある瞬間から、キャンディマンの振る舞いが自分には「待ち望むもの」に変わる。よくよく振り返ってみると、最初の被害者もすでにキャンディマンに狙われるの相応しい存在ではあったのだが。「ミッドサマー」同様、観客がどこに目線を置くかで、ラストの展開の見え方も変わってくるだろう。

ホラー映画のわりには激烈なカットはあまりなく、恐怖描写はぬるい印象も受ける。わりと小綺麗にまとまってる。プロローグの壁から出てくるキャンディマンの異物感がピークだろう。あと空と地が「反転」したオープニングもいい。これは映画全体の構成を暗示した演出だと思うのだが、どうだろう。

「この映画を見たら鏡が見れなくなる!」ぐらいのインパクトは欲しかった。それっぽい片鱗はあったけど。作り手もそっちに振り切るつもりがなかったのか。ただ、カサブタがむけるとか、ツメが剥がれるとか、つねに誰かに見られてる感覚がするとか、身近に起こり得る「恐怖」の描き方はいやらしい。

ホラー映画として見ると、「鏡」という面白いギミックがありながら、それを活かしているとは言い難い。しかし、この映画の肝はプロットの捻りであり、そこに込められた社会的なモチーフなのだろう。もっと言うと、アメリカ社会の黒人が置かれたよりリアルな「恐怖」の映画なのだと思う。