映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋」感想

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男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋、観た。物語も演出も少々トリッキー。合間にセリフが入るオープニング、「夢」ではアニメーション、早送りのコミカルな動き。そしてリリー三部作に続いて「なぜ寅さんは幸せになれないのか?」を問う。「おまえもいずれ恋をするんだなぁ…ああ、可哀想に」が最高!

旅先では明るくたのしい寅さんが、いざかがりさんを意識し始めると、途端に体が硬くなってしまう。「私が会いにきた寅さんはこんな寅さんじゃない」と。大失敗に終わり、両思いを終わらせてしまったデートの最後にこれ言われたら、そりゃ、甥の前だろうと泣くよなあ。なかなか寅さんに酷い仕打ちだ。

いしだあゆみのじめーっとした色気が作品全体を支配してしまっている。船に乗り遅れてかがりさんの家に泊まる夜。ふすまの先から見える、子どもを寝かしつけるかがりさんの尻とふくらはぎ。慌てて上の階で布団に潜る寅さんに、さりげなく近寄る。シリーズにしては珍しいエロティックな演出である。

寅さんの「惚れた」って、もはや野原しんのすけのようなもので、カラッとしていて性欲が全面に出ることはない(そもそもいい歳したオッサンだしな)が、この回は違う。酔って距離が近づいてドキドキして…と。とらやにやってきたかがりさんが、寅さんの隣に座ってスッと膝の上にかかりつけを忍ばせる。

いや〜、そんなのやられたらコロッとやられちゃうのでは?と。ふつうのラブロマンスであれば、このままハッピーエンドへ一直線なのだが、「男はつらいよ」は違う。ここが頂点で、あとはずっと下り坂、ビターエンドへ突き走る三行半に見えてくるから不思議だ。若い頃の柄本明が息子の佑そっくりだ。