映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「ベルファスト」感想

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ベルファスト、観た。生まれ育った故郷を懐古する。モノクロであるが故に感傷的になり過ぎず、あくまで「過去」であると強調しているようだった。また、だからこそ、彼を未来へと導くスクリーンや舞台の上の景色は「カラフル」なのだろう。階段の下でひっそり一人で泣くお母さんが目に焼きついた。

まさか「チキチキバンバン」で泣けるとはね。もう二度と戻らない景色。ケネス・ブラナーがどこまで自分の体験を映画に投影しているのかは本人にしかわからないけど、好きな女の子と一緒に宿題をするとか、おじいちゃんにズルを教えてもらうとか、ささやかな幸せが散りばめられている映画だ。

やっぱり監督は「帰りたいな」って思いながら撮ったんだろうか。バディの住む家が面する通りは、いい意味で「閉じている」。四角い舞台の上に作られたセットのような空間。これは敢えてだろうと思う。おじいちゃんの家まで向かう金網のスキマだったり、トイレが外にしかなくてそこで紅茶飲んでたり。

思い返すとたくさんすてきな場面が蘇ってくるな。まったく同じ経験を自分がしたわけではないが、どこかでこの映画の懐かしい景色と自分の記憶がつながっている感覚。映画は子どもの目線で描かれるけど、家族と離れて暮らすお父さんが一瞬見せる表情や、隠れて涙を流すお母さんへの眼差しは大人のもの。

きっとお母さんは辛い気持ち隠してたんだろうとか、おばあちゃんはなにを思って僕ら家族と接していたんだろうとか、そういう現代から過去への振り返りの目線がこの物語のエッセンス、各要素のつながりを成しているように思う。そして、現在進行形の社会問題にも接続する。今も同じことが起きている。