「インフル病みのペトロフ家」感想
インフル病みのペトロフ家、観た。インフルに罹った一家が見るのは、現在と過去、現実と虚構がシームレスに入り混じった世界だった。ゴールの見えない迷路を延々と歩かされるようで体力を要するが、終盤にすべてのピースを繋げる過去が描かれ、やっと全体像が見えてくる。結局最後は謎だったが…。
正直、序盤がわりと眠くて意識が飛び飛びだったせいで、全体像を理解するのが本当にキツかった。というかすべては理解できていない。エンディングは「さすがLETOの監督!」ってオシャレさだったけど、あれがどういう伏線回収なのかよくわかっていない。たぶん大事なところで寝てた気がする。
このご時世、風邪にはかかりたくないし、まして発熱なんて…と思うけれど、たしかに「インフル病みのペトロフ家」の映像世界は、高熱にうなされたときに見る夢である。途中まで現実だと思ってたのに夢だったり、逆に、夢だと思ってたら現実だったり。
たとえば爺さんがトロリーから追い出されて入れ歯だけ残る場面。あとからペトロフの家の机に入れ歯があるのを見て、「あれ、現実パートだったのか!」と。そのまえの政治家が銃殺されるのはさすがに夢ですよね。自殺願望のある哲学者の夢を助けてやる一連の流れも、夢か現実かちゃんとわかってない笑
ペトロワの図書館のくだりは面白かった。スーパーパワーじゃん!と。あそこもきちんと長回しで収めている。白眉はペトロフとマリーナ双方の目線で描かれるヨールカだ。頭がぼんやりしてるときって、そういえば曖昧なままの過去の思い出がフラッシュバックするものだ。マリーナ目線ではっきりする輪郭。
マリーナが誰も知らない苦しみを抱えていたこと。現在のペトロフ目線のドラマでは触れられない。それがあのタイミングで明かされる。混沌とした物語の中で、唯一?と言っていいぐらいドラマティックな展開である。観た直後はぼんやりしてたけど、徐々に面白さがわかってくる映画かも。二度は観ないが。