映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「天が許し給うすべて」感想(ツイッターより再掲)

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天が許し給うすべて、みた。大傑作。郊外に住む未亡人ケリーは庭師の青年ロンと恋に落ちるが、二人の年の差を周囲の人は快く思わず…。「母として」気持ちを押さえ込んできたケリーが犠牲にしてしまったものに気づいた時の絶望たるや。結局、家族や友人に何を言われようと道を切り拓くのは自分なのだ。

まわりの人はいろいろ言ってくるけど、別にそのことで責任取ってくる訳じゃないんだよね。誰かのために自分を犠牲にすることも美しいけれど、必ずしも報われるとは限らない。周囲の環境や他人の目を、大切なことに向き合わない言い訳に使っちゃダメだ。自分で限界を設けてしまうことになるから。

この「年の差婚」のテーマ、意外とこの頃の作品では見ない印象。若い頃は娘として、結婚すれば妻や母親としての役割を求められ、いくつになっても自由になれない「女の苦しみ」は、成瀬巳喜男のテイストに近いかも?郊外に住むアッパーミドルの息苦しさは当時の主婦のリアルか。

「旅のおわり世界のはじまり」感想(ツイッターより再掲)

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旅のおわり世界のはじまり、みた。超絶大傑作。舞台で歌をうたうという夢からはかけ離れたTVレポーターの仕事。あえて迷子になることを望むかのように、興味の赴くままに彷徨う様はまるで猫。前田敦子の危なっかしく頼りない佇まい!繊細さと力強さ、二つの顔を持つ彼女の声に魅了された。今年ベスト。

慣れない環境のストレス、迷子になってしまったと気づいた瞬間の焦り、何をしても思い通りにならない苛立ち、知らない言葉に囲まれる疎外感。世界にひとり取り残されたかのような孤独と異物感。すべて経験がある。本当は何がしたい?檻に閉じ込められたヤギに、気ままに歩き回る猫に自分を重ねる。

愛の讃歌」に感動。心の居場所が定まらない。カメラを通して景色を捉えるように、ピントが被写体とぴったり合うその瞬間、山の向こうに「たくましく生きる自分」が見える。そうだ、私の世界はこれからなんだ。

「アナと世界の終わり」感想(ツイッターより再掲)

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アナと世界の終わり、みた。ゾンビ×クリスマス×ミュージカル!負け組高校生が歌と踊りでアポカリプスを逞しく生き抜く。シュールな笑いあり、思ったより豪快なゴア描写あり、そしてホロリと泣かせる仲間たちの絆あり。イヤホンして周囲の混乱に気づかないアナ、ゾンビ狩りの不良グループがお気に入り。

すらっと長い手足で華麗に舞い、軽やかにゾンビを蹴散らす主人公のアナもいいが、やはり銀髪のステフでしょう。少々皮肉屋な態度を見せながら、繊細な一面ものぞかせる。深いキャラ描写があるわけではないが、それぞれに愛嬌のある性格をしていて、これがなかなかいい。

ミュージカルとしては、音楽のパンチが少々弱い(というかセンスがすこし古い?)のと、もっとダンスを見せて欲しかったという気持ちはあるのだけれど、血の海をあまりシリアスに見せず、そこそこテキトーなノリでさらっとミュージカルにしてしまうのがすごい。クライマックスの2曲もいい。

田舎の冴えない高校生たちの前のめりの夢と、鬱屈とした感情が、歌と踊り、ゾンビとの対峙によって清々しく発散されていく。ボーリング場の安っぽい絵面も、見ているうちにだんだん懐かしく、あたたかみある地元の光景に見えてくる。どうせならゾンビも踊ってくれればよかったのにとは思うが。

「巨神兵東京に現わる 劇場版」感想(ツイッターより再掲)

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巨神兵東京に現わる 劇場版、みた。アナログ特撮にこだわった世紀末描写!精密なミニチュア、巨大感あふれる煽りのカット。東京が火の海になる絶望感は、これが「シン・ゴジラ」につながるのかと感動。林原めぐみのナレーションは静かながら恐怖を煽る。いやー、スクリーンで見てみたい!

「僕たちは希望という名の列車に乗った」感想(ツイッターより再掲)

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僕たちは希望という名の列車に乗った、みた。大傑作。東ドイツの高校生がポーランドの革命に捧げた2分間の沈黙が、やがて国家を巻き込む事件へと発展していく。国家に隷属して安泰を手に入れるか、それとも信念を貫いてすべてを捨てるか。いつの時代も大人は、そして権力は、若者から言葉を奪うのだ。

全体主義自由主義、教師と生徒、そして父親と息子。テオ、クルト、エリック、レナの4人を中心に、人生と信念の選択に揺れ動く子どもたちが描かれる。彼らは時に連帯し、時に分裂するが、決して悪者はいない。背景も思想も異なる者たちが団結することの難しさ。

「勇気がない」ことは責められるべきことなんだろうか?ひとは様々なしがらみの中で生きている。しかし、あの19人には「希望」がある。国家を敵に回しても、味方してくれる仲間たちがいる。実話をベースにした内容でありながら、緊張感は途切れず、一人ひとりの生徒の顔に寄り添う。丁寧な群像劇。

子どもは親を指差し「あんなつまらない大人になりたくない」と嘆く。しかし、彼らにも子どもには見せない顔がある。守るべきものがあり、重圧と責任の中でもがいている。単なる二項対立にはなっていない。自由は戦って勝ち得るものである。新たな分断と抑圧の時代に彼らの物語はひときわ輝いて見える。

「アレクサンドル・ネフスキー」感想(ツイッターより再掲)

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アレクサンドル・ネフスキー、みた。大傑作。ロシアを守るためドイツ騎士団と戦った人々の物語。チュド湖氷上の合戦は圧巻。おびただしい数の兵士の群れ!重い鈍器で殴り合う、本当に命を懸けているんだという迫力があった。編集のテンポがすばらしい。なかなか見ごたえのある戦争映画だった。

逃げ惑い散り散りになるドイツ騎士団の様子に楽しげな音楽を重ねるセンスが面白い。敵を徹底的に叩くところに時代を感じる。公開当時は独ソ不可侵条約を結ぶ関係だったナチスがその後その映画のように攻めてきたという事実。歴史は何度でも繰り返す。多くの人が命を落としてきたことに思いを馳せる。

「ションベン・ライダー」感想(ツイッターより再掲)

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ションベン・ライダー、みた。いじめっ子のガキ大将を救うべくヤクザに戦いを挑む子供たちを描く。ギャンギャン騒ぐ3人に中学生のエネルギーを感じる。ザク切り感のあるストーリーに若干ついていけず。冒頭の拉致劇、河原の逃避行、あられの運転する車内、最後の銃撃戦。長回しはあいかわらず芸術的。

台風クラブ」を見た後だとこのザラザラとした荒削り感に疲れてしまう。わかりにくい編集だなと思ったら、やはり3時間以上ある素材をぎゅっと縮めた結果らしい。ブルースが銭湯入ったり、初潮を隠すために海に浸かったり、性と水のイメージの反復や、フェンスを超えるアクションの多様が印象的。

映画全体が中学生のトチ狂った脳内の具現化のようでもある。ところどころロリコン趣味?が透けて見えるところには岩井俊二臭も感じる(こっちの方が先だが)。相米慎二監督はいい意味で頭がおかしい。2019年には絶対撮れないスタントや際どい女の子のシーンもある。まあまあ気持ち悪い。