映画狂凡人

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「十月」感想:プロパガンダ映画の裏表

こんにちは。じゅぺです。

今回はソ連映画「十月」の感想です。

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「十月」はソ連建国に至るまでの革命を描くプロパガンダ映画です。監督は「戦艦ポチョムキン」のセルゲイ・エイゼンシュテイン監督。映画黎明期に「モンタージュ理論」を確立した、ロシアが誇る偉大な作家です。一応「戦艦ポチョムキン」は見たことがあります。有名な「オデッサの階段」のシーンは、あまりに大きな影響を残したために今では手垢のついた表現になっていますが、それでも歴史的価値のあるものに触れる経験は意味があったと思います。なにより単純に映画として面白いですから。

本作「十月」はそんなエイゼンシュテイン監督が政府の要請を受け、ソヴィエト革命10周年を記念して製作した作品です。正直、描くべき内容は決まりきっているので冗長です。作劇上の面白さは特に感じられませんでした。

味気ない物語はともかくとして、驚いたのはモンタージュの毒々しさです。冒頭の皇帝の像を倒して歓声をあげる群衆に始まり、橋の上に折り重なる女と馬の死体、叫び声と拍手の鳴り響く党大会の熱狂、そして冬宮にゾンビのようになだれ込む暴徒。どれも刺激的です。カメラの性能の問題もあって、画面の立体感や視点の位置の魅せ方は現代の作品と比べると少々見劣りするとは思うのですが、たくさんのエキストラを使った規模感や編集のリズムによって、すさまじいダイナミズムが生まれています。

特に(作り手の意思とは全くの反対だと思いますが)党大会で聴衆が歓喜する姿には恐怖しました。世界を丸ごとひっくり返してしまう革命の暴力性と、全体主義に染まっていく市民の抱える怒りや不安。それぞれのショットが激しく交錯して独特のエネルギーを放ち、見る者の心に巣食うブルジョアへのルサンチマンを増幅させます。立派なアジテーションです。これほどまでに映像は暴力的になるのかと思いました。下手なスプラッター描写よりもショッキングですよ。

戦艦ポチョムキン」を見たのは高校生の時だったと思うのですが、その頃より見る映画の幅も広がり、エイゼンシュテインの才能をより実感を持って理解できた気がします。つぎはフィルムセンターの特集上映で見逃してしまった「アレクサンドル・ネフスキー」あたりをチェックしたいところです。