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さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「ストレンジャー」感想:カメラが真相を語る

こんにちは。じゅぺです。

今回は「ストレンジャー」について。

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ストレンジャー」はナチスの逃亡犯と彼の逮捕に燃える捜査官の攻防を描くサスペンス映画です。監督は「市民ケーン」のオーソン・ウェルズ。自分でいかにもな顔面の悪役を演じています。

ボードゲームのようにひと駒ずつフランツを追い詰めていく過程が面白い。しかしながら、悪者以外傷つかないし、その悪者も「ナチス」ということで、いかにも戦勝直後の映画という筋立てです。あまり芸があるとは言えません。まあそういう時代だったんでしょうか。

僕が面白いなあと感じたのは、演出です。「フランツ・キンドラー!」の叫び声で止まる音楽とか、初めは俯瞰ショット多めで徐々にバストショット、クローズアップと犯人に寄っていく画面設計は、脚本の頼りなさを補って余りあるだけな強度を持っていると思います。極限まで圧迫感を与えてからの時計台のクライマックスも素晴らしい。ぐいぐいフランツの顔=真実に近づいてから、最後に「逃げ場のない」時計台にたどり着くわけです。高低差を強調し、オチは落下。とても丁寧です。カメラをどこに置いて場面を切り取るかということに、ものすごく気を使っている映画と言えるでしょう。

ちなみに、奥さんを食い止めるために猿芝居を打つ家政婦のおばさんに笑いました。そしてオーソン・ウェルズのうさんくさい顔。こんな田舎町にいたら一目でバレそうな見た目です。そういう大げさというか、ある意味でピュアなパーツで構成されているのがこの映画の、そしてこの時代の作品の魅力なのかなあと思ったりします。