映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「宮本から君へ」感想

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宮本から君へ、みた。自分が大好きで、納得できないとわめき散らす未熟な男。そんな宮本が父になる。お腹を痛めて子を産むのは女。ならオスとして「強く」なれば、男は「父」になれるのか?男と女なんて今更古臭いかもしれない。でも、答えなんてわからなくても全力で生き切る宮本の「強さ」は本物だ。

電柱に向かってシャドーボクシングしたり逆立ちしたり、気持ちの置きどころがわからなくなってしゃもじでご飯かきこんだり。もはや小学生と変わらない愚直さ。例のベットの上でぐーすか気持ちよさそうにイビキかくところなんて、最低最悪ですよ。信じられないぐらいバカ。でも、全力で生きている。

大事なときになにもできない。どうにもならなくなってから喚いたり、後悔したり。そして何より「負け」を認めたがらない。宮本はそういう男なのだが、それでも靖子と結ばれ、父になる。でも、愛する女性が身ごもれば父になれるわけではない。お腹が大きくなるわけでもなければ、血も流さない。

(かといって女性もお腹が大きくなれば母になるかというとそうでもないのだが)「宮本から君へ」は、とにかく主語が「男」と「女」である。さらにそこに身体性(主に血)を絡めている。受け取り方を間違えると本質主義に陥る。暴力描写も非常に多いが、かといって「父性」の話かというとそうでもない。

宮本は常にわけわからないこと、理解できないことに対して怒り、喚き、叫び回るのだが、今回はそれが「靖子が傷つけられた」と「靖子が身ごもった」なのだ。ドラマ版の宮本はサラリーマン社会の理不尽、夢と現実の乖離の苦しさ、どうしようもなさに抗った。

映画版のそれは、圧倒的な暴力と、放っておいても育ち続ける靖子のお腹だ。宮本がどれだけ必死に自分事にしようとしても、彼には靖子の二重の苦しみがわからない。もっというとそれは宮本自身で撒いた種だ。それでも宮本は暴れる、愛を叫ぶ。もはや開き直りにも聞こえるけど。頑張るしかないのです。