映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「一人っ子の国」感想

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一人っ子の国、大傑作!共産党による一人っ子政策の実態を追うドキュメンタリー。二人目を産んだ一家の家屋取り壊し、強制不妊治療、ゴミ捨て場に重なる女児の死体、当局も絡んだ人身売買…。国家の理想の裏に隠された地獄。生き別れた姉を想い「一緒に遊びたかった」と泣く少女に胸を締め付けられる。

これが2008年の「北京オリンピック」の時ですら行われていたという事実。町中に貼られたスローガン、子ども向け教育ビデオ、それから集落の演劇…至るところに展開されるブロパガンダ。模範的な国民ゆえに国策に忠実に従う。これは政策だから仕方ない、自分には何もできなかったのだという無力感。

人生の選択を、目に見えない大きな力に奪われてしまう不気味さ、そして絶望感。この政策の失敗の責任を、誰が取るというのだろうか。誰が言い出したのか、どのような計画のもとに、どこから指示が出たのか。全くわからない恐ろしさ。そうやって何もかもブラックボックス化されているのがこの国なのか。

以前、大学の中国法の授業で党の命令に反した人民の家屋を取り壊す当局のようすを映したビデオを見たことがある。共産党は従わない人間の家を、そこに住民が暮らしているとわかっていながら、ショベルカーで粉々にしてしまうのである。正直、あまりの野蛮さで信じ難いのだが、実際に行われているのだ。 

でも、だから中国はひどい国だ、では終わらせてはいけないのである。組織とは大きくなればなるほど個の顔が見えなくなるものだ。日本政府はどうなのか、と問えば、たとえば沖縄の辺野古の埋め立てなどを見れば、やってることに大差ないことはわかる。では、会社は?学校は?普遍的な問いがあると思う。