「護られなかった者たちへ」感想
護られなかった者たちへ、とりあえずの感想。最後の10分で上映止まっちゃったけど、ほぼ締めのお茶漬けモードだったので。震災と疑似家族の切り口は、導入からほぼそのまま「岬のマヨイガ」でびっくりしたが、こちらは生活保護がテーマ。自己責任社会の矛盾を描く作品がシネコンにかかるのは意義深い。
共産党が「生活保障制度」に名前を変えましょうと主張するぐらい、生活保護には悪いイメージがつきまとう。国のお世話になる、なんて考え方をする人も多い。そして、けいさんの苦境は、正直全然他人事ではない。それこそ地震がきて生活が壊れたら、「努力」では補えない部分が出てくるからだ。
瀬々敬久監督の作品はよく言えば重厚、悪く言えば、泥に浸かって水を吸ったスニーカーみたいに履き心地が悪い。上映時間もタイトとは言えず、いいから早くこの靴を脱がせてくれ!と。本作でもよく分からないところでバレエダンサーが踊ってたり、急に説明口調が入ったりする。キレがあるとは言い難い。
というより、瀬々監督のテンポ感が、いまいち俺の好みに合わないのだろうと思う。俺の中では中島哲也や吉田恵輔と同じ並びだ。しかし、佐藤健は役の幅が広い。「仮面ライダー電王」のヘタレ役から、「恋つづ」のクールキャラ、そして「ひとよ」や「いぬやしき」、本作では鋭利な目つきの内向的な男。
清原果耶もほんとうに奥行きのある役者だ。この映画でもいろいろな表情を見せるが、特の回想の怒りなのか悲しみなのか判別のつかない、とにかく苦しさが腹の底からせり上がるような顔つき!一方、阿部寛は安定感があるものの、よくある刑事キャラの範囲でしか動かせてもらえなかったのかなと思った。
なにより居心地が悪かったのは、震災から10年経っても人びとの心や生活がズタズタのまま元に戻らない現状をのんきに映画館で観るという体験をしている最中に、それなりに大きな地震がきて、アラートが鳴り、それでもなんとか鑑賞を続けようとした自分がいたことだ。
なにより居心地が悪かったのは、震災から10年経っても人びとの心や生活がズタズタのまま元に戻らない現状をのんきに映画館で観るという体験をしている最中に、それなりに大きな地震がきて、アラートが鳴り、それでもなんとか鑑賞を続けようとした自分がいたことだ。
少なからずその構造に加担し、みずからの首をじわじわと締めながらもなお、「あと10分で映画終わったのに」とブツブツ呟きながら、地震で中止になったチケットの返金処理を済ませる、あまりにのんきで愚かな自分に気づいて、なんだかなぁと思ってしまった。さて、どうしようかな。