映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「心の傷を癒すということ」感想

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心の傷を癒すということ、全話見た。超絶大傑作。阪神大震災の被災者と向き合い、心のケアのあり方を考え続けた実在の医師の物語。常にそばに誰かの存在を感じること。余震が怖くて眠れない夜、家族が見つからない不安、自分を認めてくれない父。それでもひとりぼっちじゃなければ、そこに光はある。

柄本佑の抑制の効いた演技!すばらしい。野暮ったいメガネでは隠しきれない色気よ。ゆっくり、子守唄をうたうように話す彼に、心を開かない人がいるだろうか。優しくて、ユーモアにあふれるその人柄に惚れる。でも、みんなと同じように怒り、悲しみ、絶望する。超人ではない、血の通った人間なのだ。

尾野真千子もよかった。「東京物語」での出会いが可笑しい。そして「なあ、これ押し花にしよう」の愛らしさ!安先生を見る愛情に満ちた眼差し。彼が志半ばで倒れたことを知っているが故に、その満ち足りた表情にも切なさが宿る。哀しそうな顔より幸せそうな笑顔にグサグサやられた。あの玄関の場面…。

阪神淡路大震災東日本大震災。災害続きのこの国では、いつ誰が被災者になってもおかしくない。あした突然家がなくなって、体育館の床で寒さに凍えながら寝る羽目になる可能性だってゼロじゃない。災害だけじゃない。思いもしなかった病に蝕まれ、やりたいことたくさん残して死ぬかもしれない。

第4話で安先生は末期の肝臓ガンを知らされる。いつも自分に厳しく当たった父と同じ道をたどる人生。「まだ何もやってないのに」の言葉ににじみ出た彼の無念さに、心が締め付けられた。そして父の遺品に紛れていた、線がびっしり引かれた「心の傷を癒すということ」の本。

皮肉なことに、親子は本を通してお互いの存在を最も近くに感じていたのだ。しかも、相手には伝わらない形で。虚しいけれど、切っても切れない家族の縁。そして最後の神戸ルミナリエ。そこにいないはずの安先生がすぐそばで微笑んでいる。死んだら肉体は消えてしまうけど、大切な人をそばで見守ってる。

このドラマは「たとえそこにいなくても、誰かの温もりを、その存在を感じ続けること」で貫かれていた。避難所で苦しむ被災者の人びとのエピソードだけでなく、ほとんど目を見て話すことができない父と子や、幼い子どもと妻を置いて旅立った安先生の話にも通底するテーマだったと思う。