映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「ペパーミント・キャンディー」感想

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ペパーミント・キャンディー、大傑作!「戻りたい」と叫びながら自殺した男の20年を遡る。なぜ彼は廃人となり死に追い込まれたのか?を探るミステリー的構造。背景にあるのは韓国の近代化と希望の歴史であり、国家の運命と個人史が結びつくのがこの国の映画の面白いところ。ナオットケの調べが切ない。

20年前、スニムと出会ったヨンホが空を見て涙ぐむ。彼は何に感動したのだろう。確実に言えるのは、まだ彼の目には明るい未来が見えていたということ。「人生は美しい」と、そう思えていた。しかし、光州事件のトラウマをキッカケに、彼は優しさを心のうちにしまい込み、暴力的な男になってしまった。

「どうすればいいんだ。君に去られたら…」の歌詞が、すべてを暗示していたのだ。同じ青空でも、かつて「美しい花を撮りたい」と笑っていた頃のそれとは全く違う。むしろ、無邪気で何も知らなかったかつての自分を、いろいろな失敗を積み重ねて見るも無残な現在の自分をあざ笑うかのようだ。残酷な空。

最初と最後の川辺のピクニック、繰り返される「ナオットケ 」のメロディが強烈。スニムの故郷を訪れた日の夜、店で会った女を抱きながら泣くヨンホ…の場面も好きだ。後悔して弱音を吐く情けなさも含めて。そして光州事件。韓国の近代史って面白いよなあ(混乱の根っこは日本の占領にあるけど…)。