「劇場版「鬼滅の刃」無限列車編」
劇場版「鬼滅の刃」無限列車編、みた。汽車を支配された対エンム戦の激しさもさることながら、上弦の月と柱のラストバトルは壮絶だった。ザック・スナイダー映画のようだ。炭治郎を待ち受ける運命の過酷なことよ。最後は「ありがとう 悲しみよ」って言えるようになるんでしょうか?煉獄さん強かった。
まあただ絶叫がしつこいですよね、どうしても。二郎系ラーメンにさらに塩コショウを振りかけるようなしょっぱさ。モノローグさえなければ美しい場面なのに…と思ってしまうけど、作風なので仕方ないか。夢の世界の家族を背中に感じながら、振り切るよう雪原を走る炭治郎のシーンはハイライトのひとつ。
でもここで「ここに残りたいけど…それはダメだ!」ってストレートに言ってしまう。映像の美しさを言葉で殺してしまった。もはや無音で見た方が細微なところまで伝わるんではないだろうか。あとクライマックスの日の出も素敵。希望でいるはずの夜明けが、煉獄さんの死のカウントダウンになる。
アニメは流し見程度だったので深くは語れないけど、炭治郎や柱、鬼たちが本当の意味で戦っているのは、それぞれの対立相手ではなく、己の過去や後悔なんですよね。「こんなはずではなかったのに」、「もっと長くあの人といられたら」、「誰かに認められたい」。鬼がなぜあんなに苦しんでいるのか。
鬼の死に様がいつも悲惨なのは、その痛みを僕たちもわかってしまうから。単に斬り殺せばいいというものではない。しかし、鬼になってしまった時点で彼らは過去に呪われている。残念ながら一度深みに挟まってしまったら抜け出せない。観客もまた鬼になる手前でみんな踏みとどまっている。
煉獄さんがアカザの誘いに乗らず、人間の老いと死を肯定し、戦い続けたのは、母との美しい思い出が呪いではなく、彼の支えになっているから。アニメで二時間は長いかなと思ったけど、なかなかに密度が濃くて飽きることはなかったし、ふつうに面白かった。魅力的に人が死ぬ映画は、いい映画だと思う。