映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「二十四の瞳」感想

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二十四の瞳、みた。瀬戸内海のカラッとした青空が、陰惨な戦争の記憶をやさしくも残酷に包みこむ。大石先生が子どもたちを引き連れてたのしげに歌う様は「サウンド・オブ・ミュージック」を思い出す。女性」の視点から戦争を切りとった作品、と捉えることもできるのではないか。アカ狩りの件に既視感。

ニッポンの風景はスタンダードサイズによく映える。畳と障子でつくられた四角い部屋の圧迫感、その狭っ苦しさは、ビスタやシネスコでは表現しがたいのではないか。「軍人なんてそんなにいいものかしら」と現代の感覚からすれば至極真っ当な大石先生の意見も、軍拡の世論に押さえ込まれてしまう。

軍人になりたいと願う3人の少年と丘の上で語り合う場面は、この映画のハイライトだ。大石先生がたしなめても彼らの意志は変わらない。戦争も止められない。歌手になりたい児童と、それを止めようとする親のあいだに立っても、「私からは何も…」としか言えない。序盤、大石先生は無力に見える、

母は病で他界し、夫は戦死。末の娘も事故で失う。小豆島に来て手に入れたものが、どんどん離れていく悲劇。そして、教え子もまた不況の中で出稼ぎに行き(修学旅行先で松江に出会う切なさよ!)、男の子はみんな戦場で散っていく。おそらく当時の日本ではありふれていた景色だったのだろう。

それでも、生き残った者たちは力強く生きていく。楽しかったあの頃の思い出がある。戦争で散っていった子どもたちを決して忘れることはない。最後、同窓会で先生が目にする教え子たちからのプレゼント。たくさんのものを失ってもなお大石先生は自転車を漕ぐ。痛々しくもさわやかなエンディングだ。

瀬戸内海がホントにきれい。また行ってみたくなったなあ。「二十四の瞳」は観光映画としても優秀だ。なんどか繰り返し出てくる、バスが走る坂道は特に印象的だった。連絡船に乗って、先生と子どもたちが風を浴びる姿も気持ち良さそうだった。そういえば「さびしんぼう」では富田靖子が船通学だった。