映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「隔たる世界の2人」感想

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隔たる世界の2人、みた。家に帰りたいだけなのに、警察官に殺されてしまう悪夢をループする。どうしてしてそうなってしまうんだろう、流石にそんなはずない…と言いたくなるが、これはファンタジーではなく現実だ。おそらくこの国のマイノリティが感じているであろう恐怖をありのままに描く。傑作!

隔たる世界の2人、差別する側の「理由」を描かなかったのは、人によっては一面的に見るかもしれないが、むしろ誠実であると思った。差別を絶対的な悪として扱う。「理由」は、正当化の論理を生み出しかねない。ブリオナ・テイラーやジョージ・フロイドが殺されていい理由など一つもなかったはずだ。

まったく救いのない話にしたのは、それだけ世の中の分断が深まり、ほとんど取り返しのつかないところまできてしまった証左だ。世界はロス暴動のきっかけになったロドニー・キング事件の頃からさっぱり変わっていない。「ドゥ・ザ・ライト・シング」で描かれた対立とその虚しさは、むしろ拡がった。

非常にシビアな内容でありながら、憎しみを煽ることなく、祈りにも近い希望が込められている。何度立ち上がっても同じ結末を迎えるカーターの戦いは、決して大げさな比喩などではなく、アメリカの黒人が置かれている現実なのだろう。しかし、これをエンタメで終わらせない為にどうすればいいのだろう。