映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「ほんとうのピノッキオ」感想

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ほんとうのピノッキオ、観た。童話のキャラクターを実写にした違和感やグロテスクさを、そのまま美しく撮ろうとするセンス!美醜のスキマにいるピノッキオのデザインが良い。その佇まいは善悪の判別がつかず、ときにピュアな心で優しく人に接し、ときに欲に走って失敗する愚かな彼の揺らぎそのものだ。

「美しくもグロテスクなダークホラー」というだけなら特に新鮮さはない。ギレルモ・デル・トロ監督作品を筆頭に、すでにすばらしい作品もたくさんある。しかし、それでもこの映画のキャラクターデザインや美術のセンスは輝いている。ギリギリで既視感を回避する、独特の美点がある。

特にこだわりを感じるのは、各キャラクターのテクスチャだ。昔だったらCGで処理しそうなところを、特殊メイクで俳優の地肌から作り上げているので、非常に生っぽい質感がうまれている。ピノッキオの木彫りの手触りには感動した。キツネやネコは人間風なのにサルはサルなのも面白い笑 メリハリがある。

このビジュアルで攻めるならば、よりダークで残酷な物語にすることも可能だったはずだ。ここは評価が難しいところで、童話を捻くれた解釈で捉えなす試みはすでにたくさんあったので、そのままやると二番煎じしかならない(むしろ周回遅れ感すらある)。しかし、本作の解釈にぬるさを感じるのも事実だ。

ディズニー映画的な朗らかさも残しつつ、かつ、必ずしも共感を呼ばないピノッキオのキャラ造形や大人たちのエゴに、ダークな味わいを残す、露悪に走りすぎないバランス感覚はこの作品の美点かもしれないが、どっちつかずの印象を受けるのも事実だ。ビジュアルの面白さにストーリーが追いついていない。