映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「GUNDA/グンダ」感想

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GUNDA/グンダ、観た。音楽もナレーションもない、農場に暮らす豚の親子を追ったドキュメンタリー。すやすやと寝息をたてる母と、騒がしくそのまわりを歩く子。ファーストカットから映画の着地点は見当がついてしまったのだが、これを観て何か感じろという企画の趣旨に疑問を感じなくもない。

おそらくあのラストを撮りたくて映画は企画されているはずで。動いたり、止まったり、ぐるぐると戸惑いを隠せず歩き回る彼女の姿を観て、動物の「感情」の細部にふれる体験に心動かされたのは事実だけれど、ただカメラを向け続ける、それを商品として世に送り出すことの残酷さに目が向いてしまった。

ぱんぱんに膨らんだ母豚の乳房と、猛獣のように食らいつく子たち。まだ目が見えないから(たぶん嗅覚を頼りに)乳を探す。ほかの子を踏みつける、そして大騒ぎになる笑 農場を散歩する豚の親子。陽光によって際立つモノクロのコントラスト。横移動で追うカメラ。まるでピクニックのような光景。

母豚が寝転がって乳を飲ませるために、わざわざ地面を掘ってくぼみを作るのが面白い。放っておくとすぐ子たちが乳にかじりつくので、彼女も少々めんどくさそうにしている。ニワトリ三羽が茂みを闊歩するパートもたのしい。地元の商店街をぶらつく少年たちって感じ。背中越しのショットがカッコいい笑

牛たちがドタドタと土煙をあげながら農園を突っ走るパート。上空からドローンで撮る。俯瞰の長回しはなかなか迫力があった。人間が一切映らないのでスケール感が麻痺していたが、この牛の集団を観て、そういえば豚ってそんなに大きい生き物じゃなかったなと。当たり前のことに気付かされるのだった。

映像も良いのだが、それ以上に音響の設計がすばらしい。音楽がない分、自然から拾った音をいかに「聴かせる」か、景色を立体的に「見せる」か、かなり綿密に計算されている。まあちょっと作為的すぎないか?と思ったりもしたけど、ただ音を流すだけではおそらく見るに堪えないので、バランスが難しい。

俺のお気に入りは子豚が小便をするカットだ。奥に母豚が寝ている。手前の子豚ではなく、奥の母豚にフォーカスを合わせる。ピンポケで映され続ける、ちょろちょろと流れる小便がシュールで笑えた。そういえば、豚だってトイレ使わなくても立ち止まって用を足すんだなと思った。