映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「GAGARINE ガガーリン」感想

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GAGARINE ガガーリン、観た。母との思い出が詰まった団地を守るため、友人と奮闘するユーリの物語。ガガリーンが訪れた「60年台の夢」は老朽化し、貧しい人たちの最後の拠り所となった。どんどん一人ぼっちになっていくユーリの孤独。ちっぽけな居場所を守る戦いと人類の夢が接続していく。

居場所が奪われていく。単に建物が古くなったからではない。そこには弱い立場の人たちが声を上げられない現実がある。東京フィルメックスで観た「昨夜、あなたが微笑んでいた」を思い出す。ガガリーン団地はパリ五輪のために取り壊されるらしい。世界中のどこでも起こっている出来事。

ラジ・リ監督の「レ・ミゼラブル」やデンマーク映画「アンコントロール」でも描かれているが、さまざまな社会階層の人が暮らす郊外の団地は、もはやひとつの社会として成り立っている。ユーリが友だちと協力して建物を直したり、みんなで日食を見る場面は美しかった。

そして、物語のスケールはどんどん個人的なものになっていく一方、宇宙船や月面着陸を思わせるモチーフの数々によって「人類の夢」とオーバーラップしていく。ここの抽象的な展開は好みが分かれるかもしれないし、もう少しテンポ良く捌いてもよかったが、ミクロとマクロを行き来する感覚が面白かった。