映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「シラノ」感想

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シラノ、観た。「シラノ・ド・ベルジュラック」のミュージカル映画。美女への想いを抱える醜男…というプロットは古典的だし現代に描くにはあまりにロマンチックなきらいはあるが、ピーター・ディンクレイジが演じると色気も品も出てくるなあ。戦地に送られる男たちの愛の歌はいま違った響きを持つ。

お話がドライブするまでまあまあスローペースなので、最初の方はちょっとウトウトしてしまった。しかし、壁越しの恋のやり取りのあたりから一気に盛り上がる。前線に送られた兵士たちが、故郷に残した家族への愛を歌う場面。残念ながら、いま海の向こうで起こっていることに重ねてしまった。

しかし、ピーター・ディンクレイジをシラノに起用するのはともかく、助演にヘイリー・ベネットとケルビン・ハリソン・Jr.という座組は、地味というか、華がないというか。この映画のウリがよくわからない。最近はミュージカル映画も再興の兆しだが、その中で埋没しているように思う。質は高いのだが。

空間設計や美術デザインは、劇映画っぽさに振り切らず、あくまで戯曲が原作であることを意識した、いい意味での箱庭感がある。冒頭のロクサーヌが寝室から出てきてドレスを探し、劇場でシラノと再会するまでのくだりなんて、場面の移り変わりもなんとなく舞台上の光景がイメージできる。

しかし、あまりデフォルメにも振り切り過ぎていない。たとえばこれがディズニー制作の「シンデレラ」や「アラジン」だともう少しアクションがあるし、ドレスは派手だし、カメラは縦横無尽に動くだろうと思う。ただ、シラノの「報われない愛」はツボだ。最近の作品だと臭くてまずやらないから笑 貴重。