映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「トップガン マーヴェリック」感想

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トップガン マーヴェリック、観た。面白かった!生死ギリギリの世界で戦うパイロットたち。フツーに生きてたら叶わない世界を覗くのが映画の楽しみだとしたら、こんなにも映画的な作品はない。そして老いと向き合うトム・クルーズが、死にゆく映画の世界で生涯現役を誓う物語がオーバーラップする。

正直、映画としてやってることは昔と変わらないし、前作との繋がりを強調しているから懐古的な作品になってもおかしくないんだけど、ちゃんと現代の映画になってる。しかも、トム・クルーズの自己言及的なエッセンスを盛り込みつつ、そればっかりを全面に押し出しもしない。かなり絶妙なバランス。

映画がまだエンタメの王道として威張れていた時代の、そのままの手触りのたのしさを、最新の技術で表現してくれる。冒頭のハイテク戦闘機のワクワク感。空を飛ぶとは、人間にとってそれだけで大変な営みであり、プロフェッショナルたちの戦いの場であり、なにより「ロマン」なのだ。ガツンとやられた。

シチュエーションの転換もうまい。必要最低限のロケーションで、しかも狭いコックピットの映像が続くのに、絵的に飽きることはない。訓練所のある広陵とした砂漠。砂っぽくて、汗臭くて、生のにおいがしない。そこを戦闘機が飛び交う。なによりそこにトム・クルーズがいる。それだけで場が持つ。

酒場の場面は緊張感が続くこの映画において、唯一の癒しである。ジェニファー・コネリーのハッとする美しさ。しかし、ここが過去と現在の結節点の役割も果たす。そこにいないにも関わらず、不穏にグースの不在を感じさせる空間。そういえば、マイルズ・テラーはやはりいい役者だ。不貞腐れ顔俳優。

話が逸れたけど、訓練所では砂漠、海に浮かぶ母艦を挟んで、実戦は雪山…という対比がいい。視覚的には、ちょっとしたサプライズになっている。砂と雪。訓練と本番は全然ちがうんだ!ってことを目でわからせる。なんか練習と違くない?って、感覚的に思ってしまう。不測の事態が起こりそうだ!となる。

グースの死が重しになっているので、どの航空シーンも、全然安心できない。トム・クルーズの映画だし、みんな何とかなるでしょ、みたいな感覚はあまりなかった。いつもみんなギリギリで戦ってるんだ。どこのラインを越えたらヤバいのか事前にルール説明してくれる親切設計。おかげですんなり楽しめた。