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さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「ローラ」感想:ドゥミ監督の描く「運命」

こんにちは。じゅぺです。

今回は「ローラ」について。

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「ローラ」は交錯する3つの恋を描くフランス映画です。監督は「シェルブールの雨傘」のジャック・ドゥミです。先日も「天使の入江」を見ましたが、私は「ローラ」の方が好きですね。

ドゥミ監督の作品は、この「ローラ」も「天使の入江」も「シェルブールの雨傘」も「ロシュフォールの恋人たち」も、すべてある種の「運命」をテーマにしているのではないでしょうか。たとえば「ローラ」では、ローラとローラン、ローラとミシェル、セシルとフランキーの3つの恋が描かれています。それぞれ偶然の重なりによって諦めていたはずの恋が近づいたり、離れたり。親密だった頃の懐かしい記憶が心を乱し、初恋の記憶が呪縛になっていきます。

いつ誰と出会うかも、誰かを熱烈に想う気持ちも、そして振り向いて欲しいあの人の気持ちも、どれも自分の思い通りにはいきません。ただ「運命」に支配されるしかないのだと思います。そして、人は自分ではどうにもならない現実や過去の思い出を受け入れて、前に進んでいくしかないのでしょう。僕が見てきたドゥミ監督の映画には、そういう人生の理不尽さをみずみずしく描いているように思います。そのみずみずしさとは、片思いしている時の胸がちくちくズキズキと痛むあの感覚や、ふとしたきっかけで過去の失恋を思い出して手づかみでぎゅーっと絞られるように心臓が苦しくなる瞬間をフレッシュに捉えているという意味のみずみずしさであり、非常に生々しいものです。

キャバレーで踊るローラ、お祭りで手を繋ぎ走りまわるセシルとフランキー…どの場面もたいへん美しく、強く目に焼きつきます。だからこそ、映画が終わってこれらのカットを思い出したとき、なぜか自分もちょっと傷ついたような気がしてしまうのです。それだけ重い何かがこの映画にはあります。ドゥミ監督の原点を知りました。大傑作です。