映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「女と女と女たち」感想:幸せを求める不ぞろいな女たち

こんにちは。じゅぺです。

今回は「女と女と女たち」について。

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女と女と女たち」は、シャーリー・マクレーンが1人7役で挑むオムニバス映画です。1人2役の作品はたまに聞きますが、1人7役って初めて聞きました。ものすごく俳優の技量が試される挑戦ですが、シャーリー・マクレーンはその期待に見事に応えています。

彼女がカメレオンのように姿を変えて演じるのは、気まぐれでエキセントリックな女たちです。葬列のやもめ、理想主義の通訳者、心中前の男女、衣装被りが気に入らない女優、謎のストーカーに恋する人妻…。さっきまでと真逆の態度をとって周囲を困惑させたり、変なところでスイッチが入って気分が変わったり。それがとても自由で、魅力的なのです。

彼女たちのぐるぐる変化する感情と同じように、人生もどこで転機が訪れるかわかりません。景色が変わらなくても、見方を変えれば、人生が急に明るく開けることもあります。さっきまで憎んでいた相手が突然愛おしく感じられたり、死ぬのがバカらしくなったり。人間ってとても理不尽で、どこまで考えても不思議な生き物だなと思います。

この映画が面白いのは、幸せを必死で追い求める人を不恰好に映すところなんですよね。頭の先にニンジンをぶら下げられて走る馬のように、掴もうとしても届かない、形のない幸せを追いかけている様は、どことなく歪で不ぞろいな感じがします。そして、不幸のどん底で嘆く人もどこかユーモラスです。

側から見れば些細なことに、泣き、笑い、怒り、絶望する、そんな7人の物語にひとつの芯があるとしたら、それはある意味での「しょうもなさ」だと思います。オチだけ説明してしまえば、どれも「しょうもない」話。なんだいそれだけのことかいって、思わず突っ込みたくなるようなお話ばかりです。だけど、それがドラマだし、人生なのです。その鮮やかな感情の変化にこそ面白さがあります。さっきまでの自分といまの自分は違う。彼女たちはいまこの瞬間を生きています。全体を通して見ると、清々しく、ハッピーな気持ちになれるのは、そうやって自分の気持ちに素直に生きる人たちを肯定してくれる優しさが随所にあるからではないかと思うのです。