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さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「リアル・スティール」感想:ロッキーの哲学を継承するお父さんヒーロー

こんにちは。じゅぺです。

今回は「リアル・スティール」について。

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リアル・スティール」は、堕落したボクサー・チャーリーが離れ離れになっていた息子・マックスとロボットボクシングに打ち込むうちに本当の親子になっていく様を描くSF映画です。

ボクシング映画にハズレなし!ですね。本当に素晴らしい映画で、ひさびさに手汗をかきながら映画を見ました。そしてボクシング映画である以上に、ロッキー×SF×親子モノという最高の組み合わせになっています。はじめはバラバラだった父子が共通の夢に向かって二人三脚で走り始め、最後は本当の絆を取り戻す…。思い返すだけでも、胸が熱くなります。徐々に闘士の目になっていくチャーリーがすさまじくカッコいいのです。

ところで、いつまでもボクシング映画の金字塔として輝き続ける「ロッキー」シリーズの魅力ってなんなのでしょう?僕はたとえどれだけ苦しい立場に追い込まれても、決して人生のリングを降りず、最後まで立ち続けようとする不屈の精神だと思っています。たくさん殴られても立ち続ける、強大な敵に対しても怯まず戦いを挑む。「ロッキー」は、貧乏なゴロツキから始まり、お金持ちになっては騙されて文無しになり、最強のライバルであり親友のアポロはリングの上で死に、妻を失ってから癌になり…と何度も大きな試練に見舞われています。しかし、彼が人生を諦めることは決してなくて、挫けそうなときも仲間たちの力を借りながら、最後はリングの上に帰ってくるのです。僕のもうひとつの大好きなボクシング映画「百円の恋」も同じスピリットで貫かれていて、これはボクシングを描く上での肝であるとすら思っています。本作「リアル・スティール」も「最後までリングの上で戦い続けろ、人生を諦めるな」という熱いメッセージが込められていました。ボクサーとしての栄光は遠い過去のものとなり、息子の前で無様に足蹴にされる姿をさらし、それでも、最後はリングの上に立って(正確には戦うのはロボットですが)戦うのです。大切なのは、勝つか負けるかではなく、戦うか戦わないかです。戦い始めなかったら、勝つことも負けることもできません。チャーリーもまたロッキーの哲学を継承するヒーローなのだと思います。

また、SF的な要素も非常に楽しい映画でした。ボクシングであればひたすら自分の肉体と向き合い、痛みを与えていくことで強くなっていきますが、本作の場合はロボット対決です。技術の知識と創意工夫がモノを言います。大人も子どもも同じ土俵で戦えるのです。これってすごく今風の発想だと思います。SNSやネットゲームのアバターに近い考え方です。年齢や性別は、リングの上では関係ないんですよね。誰だって戦いに参加することができるわけです。これは「とにかくリングの上に立て」という作品のメッセージにも絡んでいて、誰だってチャンピオンになるチャンスがあるということです。リングを人生に置き換えたら、これほど素敵な考え方はないなあと思います。

そして、チャーリー/マックス親子の場合、ボクシングの戦力は父、ロボットの開発は息子、という役割分担もアツいですね。足りないところを補い合う二人の関係は、機能不全に陥っていた父/息子としての関係にも影響を及ぼします。ロボットを修理するようにとはいかないけど、一つひとつもつれた糸をほぐして、二人は本当の親子になっていくんですね。「いつまでも幸せに…」みたいな甘っちょろいオチにせず、一旦は離れ離れになっても、二人の親子としての絆は続いていく…という少しオープンな終わり方になっているのも好みです。本当に素晴らしい映画だったと思います。オススメです。