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「惑星ソラリス」感想:胸に澱む後悔と向き合いながら

こんにちは。じゅぺです。

今回はタルコフスキー監督の名作「惑星ソラリス」について。

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惑星ソラリス」は、知性を持つ海によって作られた亡き妻ハリーの「複製」と出会ったクリスが、科学者として愛情と倫理の間で揺れ始める様を描くSF映画です。

「2001年宇宙の旅」と並んで「眠気を誘う」SF映画としてよく名前を挙げられますが、僕もしっかり寝落ちしました笑 お話の筋が少々追いにくい上に、会話の内容も抽象的かつ哲学的で、一生懸命追いかけていても途中で集中力が途切れてしまうんですよね。おかげで何度も巻き戻し、欠落した部分を見直す必要がありました。なので普段よりもじっくり時間をかけて作品に向き合えているかもしれません笑

とはいえ、じゃあこの映画は何を描いているんだろうと考えてみても、なかなか一言でまとめるのは難しいと思います。会話のいたるところにヒントになりそうなキーワードも散りばめられているのですが、言っていることがわかるような、わからないような、ふんわりと輪郭を掴むことしかできません。

惑星ソラリス」はストーリーの流れを追いかけても本当の面白さがわかるタイプの映画ではありません。詩のように情感豊かな映像と音楽の調和に浸ってこそ、真の価値があるのです。

たとえば、冒頭から印象的に挿入される、波にたゆたう水草は、まるで意思を持って動いているかのように活き活きとしていて、ソラリスの海とハリーの複製のイメージに重なります。また、本作「惑星ソラリス」をうたいつつ、お話のほとんどがソラリス上空に浮かぶ調査船内で展開されますが、その描写のきめ細かさも見応えがありました。(カメラのことは詳しくありませんが)レンズが奥の奥までしっかり空間を捉えていて、非常に「深い」絵になっているんですね。先の先まで湾曲して一つの円のように続く宇宙船の通路は、クリスたちが内面世界の迷宮に迷い込んでしまったことを表しています。クリスが空想の世界から抜け出せなくなってしまったことを暗示する「屋内に降る雨」のショットも不穏さと死の匂いを漂わせていて、とても印象的でした。「惑星ソラリス」の面白さは、こうした映像体験にこそ立脚するものだと思います。

よくわからないなりにも映像を楽しみながら鑑賞していく中で、やはりいちばん混乱したのはラストです。あんまりお話の中身を理解しないまま(途中寝落ちもはさみつつ)見ていたので、とっさには内容を理解できませんでした。しかし、あとからじっくりかみしめていくと、全体をつかむ上であのオチは欠かせないと考えるようになりました。空想に浸ることを選んでしまったクリスの悲劇的な姿から思うのは、かつて犯した過ちへの後悔は、いつまでも暗く胸の奥に澱み、人間の理性は、得られたはずの愛への渇望によって簡単に揺さぶられてしまうということです。あまりにリアルな幻影が実体を持って目の前に現れたとき、人はそれを「偽物」として退けることができるのだろうか。拒絶できなかったら、それは「弱さ」なのだろうかと、考えてしまいましたね。

正直、スローテンポな話運びに、抽象的な会話劇にはついていけない部分もありました。ショットの切れ味なら「ノスタルジア」の方が圧倒的に上回ってると思います。しかし、見ている最中の興奮もさることながら、見終わった後、一つひとつの要素を再構築して考察するのもなかなか楽しい体験でした。いずれまた見返そうと思います。今度は眠くない時に笑