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さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「サスペリア(1977)」感想:ガーリー&グロテスク

こんにちは。じゅぺです。

今回は1977年公開「サスペリア」の感想です!

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現在、リメイク版「サスペリア」が大いに話題を呼んでいますが、今回は1977年公開のオリジナル版「サスペリア」の感想を書きます(リメイク版は明日9日にレビューをアップ予定です!)。

本作はドイツのバレエ学校に入学した少女・スージーが奇怪な現象に巻き込まれていく…というお話。ストーリー自体はあってないようなものでして、傑作と名高いわりにはグダッています。90分とコンパクトな上映時間でありながら、間延びした印象を受けるのは事実です。最近のホラーはいかにどんでん返しを用意するかというアイデア勝負なところもありますが、「サスペリア」の面白さはそこではありません。

というのも、この映画は視覚的な面白さに溢れているんですね。画面全体を刺々しく染める原色の照明と、ミステリアスな音楽の織りなす世界に魅力があります。本作の舞台となるバレエ教室のお屋敷のラブリーな装飾は一見するとなんの変哲もない歴史ある館ですが、ひとたび牙を剥けば、オカルトチックでカビ臭い不気味な館に様変わりです。クライマックスの地下空間は高校の文化祭のお化け屋敷みたいな色遣いですが、やはり一流のプロがデザインすると独特で魔術的な空間になってしまうんですねえ。死の匂いのする恐ろしい雰囲気なのに、あまりに美しくして惚れ惚れしてしまいます。

このお屋敷以外にも、冒頭の一連のシークエンスもすばらしかった。スージーが降り立つ暴雨の空港、タクシーで通り抜ける鬱蒼とした森林、そして最初に少女が虐殺される屋敷の不自然なピンク。どこを切り取っても面白い。見応えがあります。

また、ホラーならではの悪趣味な描写も見どころですね。顔がズタズタに引き裂かれる美女、天井にびっしり埋まる蛆虫、明るく照らされた真夜中の廊下。監督の女の子への嗜虐心が存分に伝わる残酷さです笑

ホラーってやっぱりこうだよなと思うと同時に、グァダニーノ版「サスペリア 」がその壁を破ろうとしていたことにも気づかされます。アルジェント版のファンがルカ・グァダニーノ版を批判する理由もわかります。これは別物ですね。アルジェント版は、ちょっぴり甘くてガーリーなインテリアとグロテスクな恐怖体験の組み合わせを楽しむ作品だと思いました。

ところで最後のスージーの微笑みはたしかに気になりますね!おぞましい事件が終わった安堵か?とは思うけど、とにかく不安定な余韻を残します。たくさんの解釈がありそうだけど、僕はあえて「わからない」ままを楽しむのも粋かなと思います。なかなか楽しい映画でした。