「(秘)色情めす市場」感想
(秘)色情めす市場、大傑作!西成に生きる売春婦の物語。ざらついた白黒の映像に混沌としたドヤ街の風景が映える。ここでは性交は快楽のない痛みを伴う虚無の作業だ。彼女の表情の苦しそうなこと!地べたを這いつくばって泥水をすすってでも生きる。いや生きねばならない。ラストのアナーキーな開放感!
障害者の実夫に身を委ねる姉・トメ。母親は〈年増の売春婦〉。現場で鉢合わせることもある。流産して嗚咽する姿の悲惨さよ。冒頭の段差でタバコを吸うトメのカットからして決まってる。からのドヤ街の光景。屋上で〈指名手配犯に似た男〉にセックスを見られる場面。干された布団越しなのが面白い。
そして突然のカラー。夕日と鶏のトサカ。実夫がなぜ通天閣に登ったのかはよくわからない。弟の死を受けてトメは「私の居場所はここなのだ」と悟る。生きねばならない、というよりは、どうせ死ねないという諦観か。春をひさぐ布団の上での表情も自棄っぱち。哀しき自由。ラストカットもかっこいい。