「エル ELLE」感想
エル ELLE、観た。この物語は、突然自宅で暴漢にレイプされたミシェルが、淡々と壊れた皿のかけらを拾い集めるところから始まる。ミシェルの言動はつねにこちらの予想から半歩ズレている。その読めなさがサスペンスなのだ。徹頭徹尾「ミシェルはあなたではない。他人なのだ」と言われている気がした。
いつもは映画観たらすぐに感想をまとめるのだけど、これに関してはきのうの夕方に観て、しば、く時間を置いてもこれといった感想が浮かばなかった。ミシェルや彼女に近づく男たち(浮気相手、向かいの家の旦那さん、あるいは会社の部下)の言動がこちらの「解釈」を拒んでいるように見えたからだ。
たとえば、ミシェルはレイプされても黙々とゴミを片付ける。湯船で血が滲んでも意に介さない。しかし、緩んだ窓枠を見るとあの夜のことがフラッシュバックする。友人にそのことを告げて「だからその反応が嫌なんだ」とうんざりして見せる。終盤の彼女の振る舞いも予想外だが「理解はできる」。
正確に言えば、何でそうなるのかは分からないけど、彼女なりの一貫した判断の軸や、求めている感触があって、そこからは大きくぶれていないであろうことは理解できるからだ。そしてそれは「彼女は自分とは違う他人だ」と言う線引きをして初めて可能になる。「ELLE エル」はそんな作業の映画と言える。