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「スマホを落としただけなのに」感想:良くも悪くもタイトル詐欺

こんにちは。じゅぺです。

今回は「スマホを落としただけなのに」について。

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スマホを落としただけなのに」は志賀晃による大ヒット同名小説を「リング」中田秀夫が監督したサスペンス映画です。タイトル先行で話題になりましたが、良くも悪くも「タイトル詐欺」な作品だったと思います。

もはや、スマホは誰もが肌身離さず持ち歩く「自分」の一部であり、その分だけ自分でコントロールできなかったとかのリスクは大きくなっています。もし、自分の大切な思い出の写真や、家族や友人とのメッセージのやりとりが、見知らぬ誰かの手に渡ったらと考えると、それだけで恐ろしいですよね。そういう時代の流れの中で、この「スマホを落としただけなのに」は結構期待していました。

ところが、中盤以降の展開は、タイトルから期待される内容とズレていたと思います。僕はスマホを切り口に、ネット社会、いや、社会全体に蔓延る悪意や憎悪、醜さを描いてくれるものと期待していました。たとえば、うっかり個人情報が流れちゃって、友だちに縁を切られたり、会社をクビになったり、なんでもいいのですが、そういう日常が足元から揺らいでいくような、身近な恐怖を疑似体験できるのではないかと期待していたのです。

ですが、実はこの話の後半の肝は、主人公・麻美(正確には麻美の彼氏)のスマホを拾った「真犯人」の異常性なんですよね。ほとんどヒッチコックの名作「サイコ」のオマージュです。母親に裏切られたトラウマや、その後遺症としての異常性癖、カツラを被っての女装など、そのまま同じです。「サイコ」愛を猛烈に感じます。そして、犯人役の成田凌の演技がとにかくはっちゃけていましたね。強烈すぎて、とはや劇場から笑いが漏れていましたから。だんだん犯人のインパクトによる一本足打法になってしまい、映画としては逆に薄いものになっています。だんだんスマホが関係なくなってくるんですよね。「ドント・ブリーズ」の地下室の秘密が暴かれてからの展開のガッカリ感に似ています。期待してたのはそっちじゃないんだけど…という乗り切れないモヤモヤほど辛いものはありません。

正直なところ、そのほかの部分もあまり良い印象はありません。主演の北川景子は「いつも通り」です。あまりに定型的で過剰なリアクションなので、これまたもはやギャグになっていました。彼女がこれまで隠してきた秘密に関するサイドストーリーも蛇足だったと思います。しかもその詳細な説明を、例のごとく演説で片付けてしまう。メリーゴーランドの場面の冗長さには頭痛がしました。映画である以上、言葉ではなく、映像で語るべきでしょう。千葉雄大の演じる刑事や、犯人側の背景もある程度描きこまれていますが、それが北川景子演じる麻美の問題と絡んでいるかというと微妙で、繋がりが分かりにくい内容だったと思います。余計ですよね、正直。情報量多いわりに整理されてないので、あまり映画の面白さには貢献できていないと思います。

スマホだけで話持たせられなかったのかな、と思ってしまう、いろいろ期待ハズレな作品でした。やっぱり北川景子はこれ以上演技上手くならないんでしょうか…。