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「すてきな片想い」感想:なぜ80年代のハリウッド映画は輝いているのか

こんにちは。じゅぺです。

今回は「すてきな片想い」について。

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すてきな片想い」はモリー・リングウォルド主演の青春映画です。監督はジョン・ヒューズ。家族に置いてけぼりにされたサマンサの17歳の誕生日の一夜を描きます。

すてきな片想い」は、「アメリカン・グラフィティ」や「待ちきれなくて…」そして「バッド・チューニング」の系譜に位置付けられる作品と言えます。毛色は違いますが、「夜は短い歩けよ乙女」も大学生の1年間を一夜のできごとに仮託している点で、この手の「ワンナイトもの」の作品と言えるかもしれませんね。

この映画を見て思ったのは、やはりM・リングウォルドの顔って良いなあということです。長谷川町蔵さんあたりがよく言っていますが、彼女は80年代顔の代表格なんですよね。自分を中心に世界がまわる高校生活、自由を満喫しながら、それでも自分を理解してくれない家族や友人に対する鬱憤を抱えている。モリー・リングウォルドは、そんな贅沢なジレンマを抱える、豊かな古き良き中流の象徴なのではないでしょうか。

当時のアメリカは世界一の超大国で、向かうところ敵なしでした。ベトナム戦争の実質的な敗戦という挫折を経験しながらも、70年代の退廃的な空気感は薄れ、より開放的で能天気な時代に突入していったのが、80年代のアメリカなのではないでしょうか。僕は当時産まれていないので、歴史の教科書で触れた知識を元にそう考えているだけですが。少なくとも、ハリウッド映画の流れでは「アメリカン・ニューシネマ」から「スター・ウォーズ」への歴史的転換がありました。あくまで現代日本に暮らす一人として、僕はそのように解釈しています。

そういう時代背景においてこそ、キラキラと輝く明るい未来が見えているのに、なぜだか自分の将来だけは暗く絶望的に見えてしまうという高校生たちの悩みは成立しています。だから、成長の限界が見えてしまい、アメリカが「追われるもの」の立場になってしまった現代では、こういうお話は作れないのではないでしょうか。のんきで明るい80年代カルチャーと空気感は大好きですが、どこかが心の奥で「もう帰ってこないもの」だと切なくも認識してしまうのは、世界は常に良い方向に進み続けるんだと信じる「純粋さ」を失ってしまったからではないかと思います。

「純粋さ」で言うと、話は少しズレますが、アンソニー・マイケル・ホールの童貞感も非常にすばらしかったですね。女の子を前にすると途端に余裕を失ってアワアワしてしまうのが可愛い。「ブレックファスト・クラブ」よりもコメディ色が強く、僕は本作の彼の方が魅力的に感じました。

ジョン・ヒューズの映画は、自分があの頃抱いていた(と言ってもそんなに昔ではないですが)感覚をフレッシュに思い出させてくれます。「ブレックファスト・クラブ」「フェリスはある朝当然に」「すてきな片想い」あたりだけ見てるけど、どれも本当の高校生の目線で世界を切り取っているんですよね。すくなくとも自分は「こんなこと考えてたかもな」と毎回思わされます。高校生の頃は自分も意味もなく不安を感じていました。そういうフレッシュな感情を、どうしてジョン・ヒューズというおっさんはあんなにも親身に受け止められたんでしょうか。きっと彼もまた「高校生の目」を持っていたんだと思います。

次は「プリティ・イン・ピンク」を見ようかなあ。